翌朝は昨日と変わらぬ快晴で、小鳥のさえずりと地平線の向こうの朝日が始まりを報せる。アレスティア村でも、農夫が牛や馬に鋤をつけて畑を耕したり、人夫が荷車に馬やロバをつないで作物の運搬を始めたり、農家の婦人たちも朝食作りや子供たちを起こしたりとしていた。 アレスティア侯爵邸の庭には、一台の中型飛行機が停まっていた。庭は繊細な造りの噴水とパンジーによく似た赤・黄・紫の花が植えられた花壇があったが、飛行機は翼の真上にプロペラがついた機体で、先端は楕円状で胴体は箱型で、稜加のいた世界でいうところの赤銅色のレトロな形であった。 「伯父上、これは……」 庭園に出たイルゼーラがアレスティア侯爵に尋ねてくる。稜加はエルザミーナの世界にも飛行機の存在があったことに驚きと素晴らしさに囚われていた。 「これはイルゼーラの亡き母がレザーリンド王に嫁いだ時に乗っていた飛行機だ。二十年前のモデルだが、整備はちゃんと行(おこな)っていたから飛行には問題ない」 「お母さまが……。そうだったのね」 イルゼーラはアレスティア侯爵から飛行機のことを教えてもらうと、亡き母も乗っていたことにしんみりする。 「でも、飛行機に乗れるようになるには、操縦士が、しかも免許持っている人じゃないと出来ないんでしょう?」 稜加がそのことを訊いてくると、サヴェリオが視線を向けてきて伝える。 「おれが飛行機操縦の免許を持っているんだ。それに女の子だけで旅するのは危ないからな」 サヴェリオが飛行機の操縦士兼稜加とイルゼーラの護衛としてついていくことを教えた。飛行機の中は思っていたより広く、レバー型の操縦桿や気圧機などのパーツのある操縦席の他、助手席、後部座席が三つあり、シャワー室やトイレ、キッチンもあった。キッチンは炎系のマナピースを使うコンロ、水のマナピースを使う流し台、小さな調理台や包丁などの器具もいくつかある。後部座席の上にベッドがあり、折り畳みベッドもある。飛行機の奥はエンジンルームで、そこには薄い桃色の大きな結晶がコードにつながれていた。 「この石は何?」 稜加がエンジンルームの結晶の塊を見て、アレスティア侯爵に尋ねる。 「これは風のマナブロック。マナピースの大きい物やピースにする前の形態はこう呼ばれている」 そして飛行機――この機体はイルゼーラの亡き母にちなんで〈マルティナ号〉と呼ぶことにした。マルティナ号に食糧と下着などの衣類、他にも石鹸やちり紙などの必需品を詰め込んで、サヴェリオが操縦席、イルゼーラが助手席、稜加が後部座席の一つに座ってシートベルトをし、サヴェリオが操縦桿を動かすと、マルティナ号のプロペラが回転して動き出し、上昇して離陸する。 「それでは行ってまいります!」 イルゼーラは窓からアレスティア侯爵に別れを告げると、マルティナ号は屋敷の屋根より高く上がると、アレスティア村の東へと向かっていった。 「頼んだぞ、我が姪、イルゼーラ?」 それからマルティナ号が見えなくなると、首に提げていたペンダント取り出して、金色のトップを開いて呟いた。中には幼いイルゼーラとイルゼーラによく似た女性、マルティナ王妃と亜麻色の髪に翡翠色の眼をした立派なガウンと王冠を身につけた男性、ロカン王の写真が入っていた。 「マルティナ、王よ、あなたの娘を見守りください」 マルティナ号は青い空と白い雲の中を進んでいき、稜加とデコリは窓から見える地上の景色を眺めていた。黄緑色の草原や深緑色の森、屋根や壁の色が異なる家々や建物が並ぶ村や町、薄茶色の線のような野道に青い線や点は川や池点在していた。町中や草原には自動車や荷車のような乗り物が必ずあり、時折飛行機も目にした。鳥の群れや牛や馬などの動物も目にした。 「稜加はエルザミーナの地理がどうなっているか教えてあげるわ」 イルゼーラが稜加に言うと、稜加は軽くうなずいた。 「レザーリンド王国はエルザミーナの東部にある大陸の中枢部に位置する国よ。レザーリンドから東と北の離れた先は海になっていて、他の大陸や六つ大国があって、他に共和国や公国があって全部で七十七国あるのよ」 イルゼーラは稜加にエルザミーナの世界の地理を教えてあげてきた。 「レザーリンド王国も入れて七十七国か……。わたしのいた世界の方がくにがたくさんあって、一九六あるけど実際は共和国の方が多いんだよね」 稜加は自分の世界の地理をイルゼーラに教えてあげた。 「そう。君主のいない共和国の方が多いのね、稜加のいた世界って。レザーリンド王国は今はガラシャが女王になっているとはいえ、このままだと他国を侵略するために戦争が起きてもおかしくないわ……」 イルゼーラは答えた。継母のガラシャに国を乗っ取られたとはいえ、このままガラシャの好きにさせたらレザーリンド王国と交流のある他の国からガラシャの反感を買って戦争が起こる可能性があると踏んでいた。 「そのレザーリンド王国の災厄を止めるために、救い手が現れたのですわ」 「早く仲間を集めて、ガラシャをやっつけよー」 アレサナとデコリもやる気を出しており、パートナーと共鳴していた。それからして、マルティナ号はレザーリンド王国の東の森に着き、サヴェリオはマルティナ号を着陸させる草木の少ない平地を見つけて、マルティナ号はゆっくりと地面に着く。 森は堅木や柔木、葉や花や木肌の異なる木々が自生し、木の根元には青紫色のスミレや白いスズランのような花、白に茶色のキノコが生え、羽虫や地を這う虫、オレンジ色の毛並みのリスや灰色の地毛に白ぶちの野ネズミ、灰茶色のヒワやキジバトのような鳥が生息していた。森に入ると、天上は木の枝が重なり合って日光を遮っておるが、隙間から木漏れ日が入り、森の中を照らしていた。 「確か〈フュージョナル〉のマナピースが三人目の仲間の居場所は森の中の湖、って教えてくれていたけど……」 稜加が森の中を見回していると、デコリとアレサナが宙に浮いて気配を感じ取った。 「イルゼーラ、北東の方から精霊の気配がしますわ。森の集落の住民が連れてきているのでしょうか」 「北東の方角ね……。行きましょう」 「えっ、でも森の中はどうなっているかわからないし……」 稜加が初めてとはいえ、森の中で迷子になったらどうしようと言うと、イルゼーラが一枚のマナピースを取り出す。 「これがあるから大丈夫よ」 それは白い半透明のマナピースで、スタンプのような浮彫が入っていた。 「〈マーキング〉のマナピースで、道しるべを作るんだね」 デコリが言うと、イルゼーラはうなずく。 「そうよ。でも、木の近くの石や根元の地面につけるわ。木につけたら地元の人たちに怒られるもの」 「確かに」 稜加は納得する。それからサヴェリオが紫色にテントのような浮彫の〈カモフラマント〉のマナピースを出して、自分の暗灰色のスターターにはめ込んで、紫色のマナピースが淡く光って、空中から森の木々の模様が織り込まれた大きな布が出てきて、マルティナ号を包み込んだ。こうすれば敵に見つからずに飛行機を守れるのだ。 サヴェリオがマルティナ号を隠すことを確かめると、稜加たちと共に森の中の湖へと向かっていった。稜加たちが森の中に入ってどれ位が経ったのだろうか。デコリとアレサナが動くのを止まったのを目にすると、森の中に湖があった。 「ここか。仲間がいると教えてくれた、湖っていうのは……」 稜加は湖を目にして呟く。湖はアレスティア村のものよりは小さかったが、木漏れ日によって水面がキラキラと輝き、水も澄んでいて、ここに棲む魚や源五郎にアメンボのような水棲昆虫の姿が見られた。その時、カーンカーンという音がしてきて、稜加や精霊だけでなく、イルゼーラとサヴェリオも耳にして、湖の向こう側で樵が木を切っていたことに気づいたのだった。 「精霊の気配がするよ」 「行ってみましょう」 デコリとアレサナは湖の向かい側へ飛んでいき、稜加たちが後を追う。 「ああ、待ってよ」 精霊は浮遊しているから湖の上を越えていけるけど、人間たちは湖の周囲に沿って進まなくてはならないため、到着に差が出るのだ。 デコリとアレサナが樵が木を切っている場所に来ると、灰茶色の木肌に丸みを帯びた葉の木が自分たちの方に倒れてくるのを目にして素早く後退する。 「わーっ!!」 二人の精霊は驚いて、後から来た稜加たちが木の下敷きになりそうになったデコリとアレサナを目にして、間一髪だったことに胸をなでおろした。その時、木を切り倒した樵が姿を見せて稜加たちに謝る。 「すみませーん。まさか精霊がいたなんて……。大丈夫ですかー?」 姿を見せたのは高めの背丈に赤い髪を高く結い上げて三つ編みにし、深緑色のつなぎを着た少女だった。肌は浅黒く、眼は鋭角な菫色で、体格は標準に見えるが、ややいかり肩であった。右手には斧を持っている。 「あ、あなたが木を切っていたの……?」 稜加が少女に尋ねる。 「うん、そうだよ。だってあたし樵なんだもの。年寄りの木を切って、薪にして売るのは樵の仕事だもの」 少女は稜加に言った。すると、少女の後ろから一体の精霊が姿を見せる。その精霊は三頭身で、木の葉状の緑の髪に樹皮のような衣をまとい、紺色の眼を稜加たちに向けていた。 「樵の仕事を知らないなんて、さてはお前ら都会の者だな〜? どうりで汚れ作業とは無縁そうな身なりなんだもんな」 精霊は稜加たちの服装を目にして述べる。 「汚れ作業って……。わたしだって皿洗いや雑巾がけするよ」 稜加は精霊に自分だって汚れ作業をしていることを話すと、少女はそれを聞いて感心する。 「ふぅん……。あたしはジーナ=ベック。こっちはベック家の精霊のウッダルト」 少女は自己紹介と自分の精霊を稜加たちに伝えると、稜加たちも自分たちのことをジーナとウッダルトに教える。 「わたしは一伊達稜加。このエルザミーナの世界とは別の世界からきたの。こっちはわたしの仲間精霊のデコリ」 「わたしはイルゼーラ。この子は精霊のアレサナ」 「おれはサヴェリオ=アレスティア」 三人の自己紹介を聞いて、ジーナはイルゼーラを目にする。 「イルゼーラ、ってもしかして、イルゼーラ姫ですか? あああ、あたしとしたことが、王女だと知らずに無礼な態度を……」 ジーナはイルゼーラが自国の王女と知ると、恥ずかしく感じて顔を赤らめる。 「いいのよ、今は。わたしも城にいられなくなっているし……。それに、仲間を探している時なの」 「な、仲間って?」 「あなたはこのマナピースのことを知らない?」 稜加は白地に虹色のマナピースを見せて、ジーナに尋ねてくる。ジーナはそれを見て、思い出したかのように拳を叩いた。 「ああ、あれのことですか。今あれは我が家にあります。ついてきて下さい」 そう言うとジーナはさっき自分が切り倒した木を両腕で担ぎ、根の方を肩にかけて持ち上げた。 「うわっ、すごい力持ち!」 稜加はジーナの体力を目にして驚く。 「それはいいから、ついていくぞ」 サヴェリオが稜加とイルゼーラと精霊に言った。 稜加たちはジーナとウッダルトの後をついてきて、森の湖畔から一キロ半ほど離れた村に着く。村は森の周囲を細長く開拓し、円筒形に三角屋根の家が森の外側に沿って並び、レンガの茶色い壁や白い漆喰の壁、屋根の色も赤や水色や黄色とカラフルで、家の傍らには木板で出来た牛やロバの家畜小屋があり、村人は牛やロバに荷物を乗せて運んだり、豚を連れて草原に放牧させたりとしていた。 ジーナの家は薄茶色のレンガ壁にモスグリーンの屋根で相当古いのか、あちこちにヒビが入っていた。ジーナの家の前にはジーナによく似たほっそりした女の人がマナピースを使って金属枠のある木のたらいで洗濯しており、同じくジーナより幼い男の子と女の子が洗濯物を木の棒の竿に巻かれた麻のロープにかけて木の洗濯ばさみを使って干していた。 「おっかさん、ただいま」 「あら、ジーナ。お帰り……。その人たちは?」 ジーナの母が彼女に尋ねると、イルゼーラが答える。 「ジーナのお母さま、初めまして。イルゼーラと申します。この二人は稜加とサヴェリオ。精霊のデコリとアレサナです」 「は、初めまして」 「失礼します……」 稜加とサヴェリオもジーナの母に挨拶をして、ジーナの母も洗濯たらいのすすぎ調整も忘れて、イルゼーラを見てかしこまる。 「イ、イルゼーラ姫ですって? ま、まぁ、こんなむさ苦しい所に姫さまが……」 すると洗濯物を干していたジーナの弟妹もイルゼーラを見て、声を上げる。 「本当だ、姫さまだ!」 その声を聞いて周囲の村人が耳にして、ジーナ一家に目を向ける。 「ひ、姫さま、外ではなんですから、中に入ってくださいまし……。それと、ダール、ニーナ。悪いけど洗濯物を干してちょうだいな」 ジーナの母は大ごとになる前に稜加たちとジーナを家の中に入れた。 ジーナの家は一階から三階と地下室に分かれており、一階は居間とトイレ、二階はジーナたち姉妹の部屋、三階は兄弟の部屋、地下室が台所と食糧庫と風呂場であった。居間は玄関に入ってすぐで、中心にらせん階段、階段の近くにトイレ、木の板の床には麻のラグと木綿のクッション、壁に備え付けられた戸棚や机、他にもマナピースの通信で番組を観るため映像板(ビジョナー)があった。稜加はエルザミーナの世界にもテレビがあることを知り、他にも冷蔵庫やエアコンのような生活用具があることを知った。窓は十字枠にガラスがはめ込まれ、更にパッチワーク調のカーテンがかかっていた。 「むさ苦しい所ですが、どうぞ」 ジーナの母はイルゼーラたちにクッションの上に座るように促し、稜加とサヴェリオとジーナも靴を脱いで、ラグに座る。すると上の階にいるダールとニーナよりも幼い男の子と女の子が階段からこの様子を覗いていた。 「ヴァール、フィーナ。あなたたちは上の階にいなさい。それで姫さまたち、我が家に何か……?」 ジーナの母が末の二人を上の階に追いやると、イルゼーラこれまでの出来事をわかりやすく話す。 「も、もしかしたら、これのことでございましょうか?」 そう言ってジーナの母は戸棚の引き出しの一ヵ所の一番奥にしまってあった小箱を取り出す。純白の木材で掌大の小箱の中には、白地に虹色のマナピースが入っていた。 「あ、あった……」 稜加はベック家にマナピースがあったことに呟くと、ジーナの母がイルゼーラに訊いてくる。 「まさか、わたしかわたしの子の誰かが、災厄を打ち破る運命を担っているというのですか……」 ジーナの母からマナピースを見せてもらうと今度はイルゼーラが訊いてくる。 「すみませんが、これを手に入れたのはいつ頃ですか?」 「ええと、七年前に父親がまだ生きていた時にジーナが森の中で見つけたものです。わたしたちはこのマナピースを引き出しの奥に入れて、お守りとして置いておきました」 稜加たちはジーナとウッダルトがそうではないか、と察する。 「あたしが救い手? そう言われても……」 ジーナが救い手と告げられると、ウッダルトが稜加たちに言ってきた。 「ジーナはな、二年前におっとさんが町へ行く途中の事故で亡くなってから、おっとさんの仕事を継いで樵になったんだ。ジーナがいなくなったら、どうしろっていうんだ?」 それを聞いて稜加は沈黙する。ジーナは亡き父に代わって稼ぎ頭になって、母親が家事と弟妹の世話をしながら暮らしているのは目に見えている。するとジーナの母がジーナに言ってきた。 「ジーナ、わたしや弟たちのことはいいから、姫さまたちと一緒にレザーリンド王国の災厄を打ち破っておくれ」 「でも、おっかさんやダールたちが……」 ジーナも戸惑った。その時、悲鳴が外から聞こえてきた。 「わーっ!」 悲鳴を聞いて一同が家から飛び出すと、紫色の鎧をまとった男がダールとニーナを両腕で抱えていたのだ。 「ヒャーハハハハ、陛下に言われて、ここを探っていたら姫がこんな所にいたなんて。何てついているんだ!」 鎧の人物の後ろにいたやたらと細身に色白、三角ばった茶色の眼に細長い顔に褐色の長い髪に紫色の目玉模様の服を着た男が姿を見せる。 「もしかして、ガラシャ女王の手先?」 稜加が男を目にして訊いてくると、男は稜加を目にして睨みつけてくる。 「ああ、お前か。ボルカーニを倒した奴ってのは。おれはパファダー。そしてこいつはおれの魔変人形(ミスティックプーペ)だ!!」 パファダーは名乗ると、ジーナの母が魔変人形に捕まったダールとニーナを目にする。 「うわーん、離してよー!」 ダールとニーナはジタバタする。 「ダール! ニーナ! この子たちを放してやって下さい!」 ジーナの母がパファダーにお願いすると、パファダーは拒否する。 「ダメだ。こいつらは人質だ。お前ら、人質を返してほしかったら、森の湖へ来い! 待っているぜ!」 そう言ってパファダーは魔変人形と共に人質にされたダールとニーナを連れて森の中へ入っていってしまった。すると村人が集まってきて何事か、と様子を目にし、稜加が村人たちを目にして狼狽え、ジーナの母がひざまづいて泣き出す。 「小さい子を人質に取るなんて卑怯な……」 サヴェリオがパファダーの行動を見てその卑劣さを感じ、イルゼーラがジーナに尋ねてくる。 「パファダーは森の中の湖で待っている、と言っていたわ。あなたとウッダルトはどうするの?」 ジーナは悲しむ母と捕まった弟妹の様子を見て、唇をかみしめた。 「行くよ。あいつが言うんなら、ダールとニーナは取り戻さないと……」 「ジーナ、あなたが行ったらジーナが危ない目に遭うわ……」 母がジーナに声をかけてきたが、ジーナは母に言う。 「おっかさん、あたしは十七なんだ。いつまでも小さな子じゃないんだ。それにあたしにはウッダルトやマナピースもあるし、何より林業で鍛えた力がある」 「ジーナ……」 稜加は自分と違い、ジーナの責任感と勇気を見て、同じ弟妹のいる長姉の姿に感心した。 (ジーナ、しっかりしてるじゃないの。わたしよりも千倍も頼もしく思える) 「ジーナ、これを持ってお行き」 そう言ってジーナの母は家の中に戻ってマナピースの小箱をジーナに渡した。 「このマナピースがジーナを導いてくれるようだから。必ず帰ってきてね」 ジーナは母からマナピースを受け取ると、稜加たちに言った。 「あたし、ダールとニーナを助けに行ってくるよ」 「ええ。だけど相手は魔変人形……持ち主を模した操り人形を持っているわ。魔変人形と戦ったことのあるわたしたちも行くわ」 イルゼーラがジーナに言った。 「え? 姫さまがさっきの人形と? それってどういう……」 「話は後だ。森の中の湖へ行くぞ」 サヴェリオがジーナにそう告げると、四人と三精霊は森の中へ入っていった。 「ジーナ、気をつけるんだよ……」 ジーナの母が一同の背中を見送り、村人たちもこの様子を見てただ事ではないと見ていた。 |
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