四月最後の土曜日の朝の舟立海岸で秋水とクーレーは真魚瀬一家と比美歌、法代に 見送られて舟立海岸の海中にあるミスティシアへの通路へ向かう処だった。 「みなさん、わたしたちの世話をしてくれて本当にありがとうございました」 秋水ことグラシアンはアザラシの皮を半分かぶった状態でみんなに礼を言った。 「いえいえ、クーレーくんとグラシアン殿が再会できただけでも我々は安心ですぞ」 人間姿のジザイがグラシアンに言った。クーレーも水色の眼で法代を見つめ、法代 もクーレーが自分の家へ帰れることに安堵していた。するとクーレーが法代に近づい てくる。 「法代、ありがとう。君のおかげでお父さんが見つけられた。これ、持ってて」 クーレーは自分の右の中指にはめていた青い半透明の石の指輪――クーレーの命を 映す石の指輪を法代に渡した。 「えっ、でも、これ大切なものじゃあ……」 「いいんだよ。もらうことに抵抗があるのなら預かってて。十何年かしたら返しに行 くから」 クーレーの台詞を聞いて安里たち高校生組とブリーゼ、ジザイが「これってプロポ ーズじゃ……」の表情をする。 クーレーとグラシアンはアザラシの皮をかぶり、これから真上に行こうとする太陽 が照らす海の中ヘ入っていった。 「さよーならー、また会おうね〜」 法代はクーレーに別れの言葉を叫んでいった。クーレーとグラシアンはミスティシ アのマリーノ王国でクーレーの母や叔父や従兄弟たちと再会して、向こうで平和な暮 らしを送るだろう。 マサカハサラも壊滅し、奪われた世界各地の珍しい生物や鉱物も元いた場所へ戻 り、安里たちアクアティックファイターも学校に通い友人たちと交流し、恋人と逢引 きする生活を受けるだろう。 <進化の装具>は見つかったものの、マサカハサラより上の"悪"はいつ出てくるかはわ からない。それは彼女たちの平和で平穏な生活の中に出てくるだろう。 その出来事は快晴の中の静かに揺れる海の水面が嵐で荒れるように。 〈第五弾・完〉 |