7弾・2話 サゾーロ星の伝説サゾーロ星の伝説


 照りつける太陽の下と赤や茶色や黄色の岩々の中と固く渇いた大地の上、サゾーロ星の大型爬虫類家畜パラドンに乗ったリブサーナ、ドリッド、ブリックとバイク姿のヒートリーグに乗ったアジェンナは駆け抜けていた。

「パラドンって思っていたより速いんだね〜。機械生命体である僕よりも性能高いんじゃないの?」

 バイク姿のヒートリーグがアジェンナに言った。アジェンナはしっかりとヘルメットをかぶって両手はグリップを握っていた。

「いやぁ、こんな厳しい岩地の環境だからたくましく進化したんじゃないの?」

 ヒートリーグの前を走るパラドンたちを見てアジェンナが返事をする。パラドンは全高二〜三メートルの大きさで、脚が太くて逞しく指の爪も鋭いのが特徴だ。駆け出した時は時速数キロ位だったパラドンは進むにつれて加速していっている。

「あっ、クレバスだ!」

 パラドンに乗っているドリッドが道の先を見て叫んだ。しかしパラドンは先がクレバスだと理解していたのか淵の所で強くジャンプし、向こう側の淵に着地したのだった。

「うおっとっとっと......」

 パラドンが着地したと同時にドリッドはぐらつき、続いてブリックとリブサーナを乗せたパラドンもクレバスの淵を踏ん切ってジャンプして着地して乗り手の体がぐらつく。

「はわわわわ......。振り落とされるかと思ったァ〜」

 リブサーナは姿勢を直して手綱を持ち直す。最後の方にいたアジェンナとヒートリーグは淵の前で立ち止まって取り残される。

「......。ヒートリーグ、あんたジャンプできたっけ?」

「あ、いや、その、それは......」

 ヒートリーグはバイク姿のままで動揺する。

「仕方がないから先に行っているよ〜!!」

 リブサーナが振り向いて大声でアジェンナとヒートリーグに言った。

 リブサーナとブリックとドリッドはパラドンに乗って先に向かっていった。ブリックが走っている道の斜め下を目にすると、広大な平地に岩をブロック状にして積んだ家がいくつもあって、屋根には鏡のような板がどの家にも張り付けられていて、緑色の垣根のような木を植えた畑にパラドンや角とヒヅメのある家畜を荷車につないで荷物を運んでいる光景が目に入った。どの住人も袖口が広がった上衣にパンツ、女はワンピースやスカートの服装で、赤褐色の肌をしていた。

「おい、もしかしてあれがパレン村じゃないのか?」

 ブリックがドリッドとリブサーナに言った。

「本当にあんな所に村が......。創造神の魂の結晶のありか、もしくはそれに近いものがあるか聞いてみようよ」

 リブサーナが二人に言った。

 パレン村の生き方は折り返しの続く坂道があったため、楽に行けた。パレン村は周囲を岩のブロックで囲まれ、岩のブロックは色の濃さが異なるため、複雑なモザイクに見えた。リブサーナたちはパラドンを止めるために手綱を軽く引いて大人しくさせた。パラドンは村の近くの尖った岩につないで自分たちはパレン村へ入っていった。

 パレン村は赤褐色の人間型異星人(ヒューマンがたエイリアン)であるサゾーロ人が老若男女と住んでおり、男は大工や工事、女は畑仕事や糸紡ぎ、若者は皮なめしや狩り、娘は幼い子供の世話や裁縫の仕事、子供たちは村の学校で勉強していた。

 家も普通の家屋の他、パラドンや獣の家畜小屋、酒やパンを作って売る店などと様々であった。環境はともかく平穏そうな雰囲気であった。村の中心には炎上の井戸が規則よく並んでいて、これが地下水を汲み上げた水だということがわかった。水を汲んでいる人は誰もが必ず一回分のタライや桶で汲んでいるため、それ以上は汲まないことから水資源が貴重ということがわかった。

「ん? あんたたち、この肌の色からして他の星の人だね? 何しにきたんだい?」

 背中に赤ん坊を背負い頭の上に何かの野菜の籠を頭に乗せた女の人がリブサーナ立ちを目にして、サゾーロ星の言葉で尋ねてきた。するとブリックが丁寧なサゾーロ星の、しかもパレン村とその周辺の方言の入ったサゾーロ語で女の人に言った。

「あのですね、サゾーロ星の、この近くにあるという伝説を探しに来ましてね、そういうのを知っている人がおれば良いのですが......」

「伝説? ああ、あんたらもしかして民俗学者の人か何かかい? それだったら長老に聞くのが一番だよ。九〇近いご老体だけど、頭はしっかりしているから」

 女の人はブリックたちに長老の家の場所を教えてあげた。

「ペシ=ミバ、マダム」

 ペシ=ミバはサゾーロ星の「ありがとう」で、三人は長老の家へと向かっていった。

 長老の家は二階建ての岩ブロック造りの家で、屋根は鏡のように太陽光板になっており、窓は透明に近い岩を薄くした物、普通の家を六軒を二段にしたような大きさで、庭には専用の井戸があった。

 長老の家はかなり豊かなのか、家の周囲には八人の見張りの男が立っており、リブサーナたちを目にすると、門前の二人が睨みつけて尋ねてきた。

「何用だ」

 リブサーナは少しびくついたが、ブリックが門番の男に声をかけてきた。

「失礼します。わたくしたちはサゾーロ星の伝説を求めに長老の家へ訪ねてきた者です」

 門番はブリックの言葉を聞いて顔をしかめつつも、三人に待つように言ってから、屋敷の中に入って数分後に玄関から出てきた。

「長老さまから許可をいただいてきた。入ってもよいぞ」

「ペシ=ミバ。では、失礼します」

 三人は屋敷の中に入り、一階の奥に居るという長老の所へ行った。屋敷の中は意外と涼しく、壁に備え付けられたプロペラが回転していて涼風を作っており、他にも台所らしき場所は炎もないのに竈でパンを焼いている女中や冷蔵庫とおぼしき石棚から食糧を出す下男の様子が見られた。下男は棚から出した青い鱗の大きな魚を寒そうに持っていた。

 薄い石の板でできた戸を叩くと、「どうぞ」という声が聞こえてきた。中に入ると、石でできた家具と植物の繊維でできた布のカーテンや寝具、床は草を編んだラグで、石で出来たベッドの上には真っ白な髪とあごひげを生やしシワとシミだらけの顔と体に背は曲がっていて背丈も低い老人が上半身を起こしており、老人のそばには黒髪に黒眼の若い娘がいた。

「おじい様、あなたを尋ねに来た異星の人たちですよ」

 娘は老人に声をかけると、老人は軽く頷く。

「初めまして、パレン村の長老殿。わたしはこの星の伝説を求めに来たブリックと申します」

 ブリックは老人に分かるようにサゾーロ語で挨拶し、続いてリブサーナ、ドリッドも挨拶する。

「わたしはリブサーナです」

「ドリッドといいます」

 老人は三人を弱っているが目ではっきりと見ると、挨拶する。

「初めまして、異星のお方......。わしはパレン村の長老のリヴェオロ。この子は孫娘の一人でチェモロ......」

 老人はしゃがれ声を出して自己紹介をする。

「お客様がいらっしゃったのなら、飲み物とお菓子を持ってくるわ。待ってて下さいな」

 そう言ってチェモロは長老の部屋を出て台所へ行った。チェモロが部屋を出ると、ブリックはリヴェオロ老人に尋ねてくる。

「いきなりこんなことを申し上げますが、リヴェオロ殿は創造神という存在を知っておりますか?」

 ブリックが創造神のことを訊いてきたので、リブサーナとドリッドは複雑そうな表情をする。

「創造神......じゃと? このサゾーロ星の救星神と何か関係があるかもしれん......」

 リヴェオロ老人は語りだした。サゾーロ星を救った神の物語を。

 サゾーロ星は一〇〇年前までは太陽が一つしかなく、しかも出ている時間がほんの六時間という短さで、人々も生物も今より辛い暮らしを送っていて、病気になりやすく作物も育ちにくかったため、身分問わずに飢えに悩まされていた。

 そんな時、サゾーロ星の空が闇に覆われ、全ての生命は闇の冷たさと暗さによる恐怖、そして前よりも飢えに苦しんでいて、多くの人間たちが食糧を求めて殺し合いや死に至っていた。

 そんな時、サゾーロ星の王は天に願った。冷たさと暗さから解放されたい。その代わりとして暑さと眩しさに悩まされても文句は言わない、と。

 その時、暗かった空に一点の赤い一等星のような光が現れ、王の願いを叶えてくれた。

 暗闇は砂のようにかき消され、寒かった空間は次第に温度を増し、澄み切った空には四つの小太陽が浮かんでいた。サゾーロ星は今のようになり、またサゾーロ人は太陽の光を集めて生活に工夫を取り入れた。

 王の願いを叶えてくれた赤い星はガルヴォ山に落ちていったが、あそこは聖地として山に選ばれた者しか入れないようになった。

「じゃあ、ガルヴォという山に行けば創造神がいるのかもしれない......」

 リヴェオロ老人の話を聞いてリブサーナは言った。

「でもよ、もしかしたら全く違う神さんだったら、サゾーロ星に来たのは何だったということになるぞ」

「あう」

 ドリッドがリブサーナに言った。

「おお、思い出した......。一〇〇年前の王は天の声を聞いた時、赤き星はこう言っていたと残しておる。

『お前の願いは聞き入れた。我がお前たちに恵みの太陽を授けよう。

 我が名は創造神、陽炎のソルトゥー』と」

「!」

 リヴェオロ老人の台詞を聞いて、一同は「当たりだ」と感じた。その時、リブサーナの意識が途切れて、軽く痙攣を起こした後、リブサーナが顔を上げてリヴェオロ老人に尋ねてきた。

「それは......真(まこと)か? 長老よ」

 リブサーナとは違った高めの女の声だった。

「フリーネスか。またリブサーナの体を借りて......」

 ブリックが声の主がリブサーナを通して、創造神のフリーネスが現れたことに察した。

「はい。リブサーナの意識は今眠らせて、私が出てきました。突然ですいません」

「リブサーナがいきなり変わるから、本当にビビったわ」

 ドリッドがリブサーナの体のフリーネスに言った。

「あなたが......創造神お一人......。あなたのお仲間が暗闇と飢えで苦しんでいた昔のサゾーロ人を救ってくれたという......」

 リヴェオロ老人は深々とフリーネスに頭(こうべ)を下げた。

「はい、サゾーロ星を救ってくれたのはソルトゥー。そして、彼の魂の結晶はここにある。

 ガルヴォ山に行けば、ソルトゥーに会えるのですね。ガルヴォ山はどこに?」

 フリーネスはリヴェオロ老人に尋ねる。

「ガルヴォ山はパレン村より五〇サペタ先にある南の地域にありますじゃ。あの山は神聖な場所の一つとされていますから、徳の強い人でないと許してくれないとか......」

 リヴェオロ老人はガルヴォ山に入るには難しいことを教えた。

「五〇サペタはサゾーロ星の距離単位で五キロ先か。しかも徳の強い者でないと山は許してくれない......」

 ブリックは呟いた。

「でも行くしかありません。テーラ星生まれの魔神やその配下たちの好きにさせないのが、今の私たちとあなたたちのような正しき行いをする者たちの役目ですから」

 フリーネスが言うと、ドリッドも軽く息を吐いてから賛成した。

「だよなぁ。そんじゃー、行くか。ガルヴォ山へ」

 ここでリブサーナの意識が戻ってきて、フリーネスと入れ替わっていた時の記憶はなく、きょとんとなっていた。

「あれ、わたし何をやってたんだっけ」

 その時、チェモロが薄い金属の盆に透明な杯に赤い半透明の液体と半円状の焼き菓子を乗せてやってきた。

「お待たせしました。ルッペの果実水とフニョーラです」

「あ、そうだった......」

 ドリッドとブリックがリヴェオロ老人の話を聞いていたあまり、席を外していたチェモロのことを忘れていた。

「取り敢えず、おもてなしを頂いてから行こうか」

 ブリックが折角だからと言うように、リブサーナとドリッドに言った。

 ルッペという果実水は甘酸っぱくビタミン五種とポリフェノールが多く、フニョーラという焼き菓子は麦粉と家畜の乳と鳥卵と花蜜をこねて軽く焼き上げて更にバターミルクと干し果物を入れてカリカリに焼いたサゾーロ人の定番お菓子の一つであった。

「それでは情報の提供を授けてくれてありがとうございます。我々はもうお暇しますので」

 ブリックはサゾーロ語でチェモロとリヴェオロ老人に礼と別れの挨拶を述べた。

「はい、ではごきげんよう」

 リブサーナたちは村を出ると、パラドンたちをつないでいる岩場へ戻った。三頭のパラドンは岩場に来ていた羽虫を器用に捕らえて食べていた。三人がパラドンに乗ろうとすると、ガシンガシンという音が聞こえてきた。何事かと別の方向を目に向けると、ロボット姿のヒートリーグがアジェンナを抱いて担いでいたのだ。

「あっ、ヒートリーグ! お前なんでロボットの姿に......」

 ドリッドがヒートリーグに訊いてくると、ヒートリーグは申し訳なさそうに言った。

「いやぁ、ドリッドたちがパラドンでクレバスを跳び越えた時、僕はバイク姿だとジャンプできないから、この姿でアジェンナを抱き抱えて跳び越えたんだ。上手く着地は出来たんだけど、アジェンナが失神しちゃって......」

 ヒートリーグの腕の中でアジェンナはまぶたを閉ざしてぐったりしていた。

「うーん、ヒートリーグがジャンプした時に脳震盪を起こして気を失ってしまったんだな。命に別状はないが、しばらく起きないだろう」

 ブリックが気を失っているアジェンナを見てヒートリーグに教えた。

「どうすんよ?」

 ドリッドが尋ねるとブリックはやれやれと言うように答えた。

「アジェンナはこのまま連れて行ったら危ないし、パレン村の住人に預かってもらうか」

 その後、ヒートリーグ、ブリック、ドリッド、リブサーナはパレン村から五キロ先にあるガルヴォ山へ向かっていった。ガルヴォ山への道のりは平坦な道が多く、緑色の茂みが所々にあり、中には草花もいくつかあった。その花蜜を吸うハナアブやミツバチ、蝶のような虫が花にたかっていたり、草をかじりに来た巻耳のウサギや縞模様のネズミがいた。

 山に近づくにつれて、嘴と蹴爪の鋭い猛禽類らしき鳥やさえずりを鳴らす紅色や黄緑色の小鳥が空を飛んでいるのを目にした。

 ドリッドたちがパラドンに乗って駆けていると、パラドンが何かを感じたようにピタリと脚を止めた。

「もしかして、ここが......」

 リブサーナは自分たちの前にそびえ立つ物を目にした。白と灰色と茶色の岩肌に所々咲く星のような花、その中心に人為的なものなのか自然にできたものか坂道が平らにあり、その先がわからないようになっていた。

「ガルヴォ山か?」

 ドリッドが呟くと、リブサーナの体が軽く震えて、フリーネスがリブサーナの体を通してドリッドたちに言った。

「間違いない......。あの山に私の仲間、ソルトゥーがいる。彼はあの山の中にいる」

 するとリブサーナ姿のフリーネスはパラドンから降りて、ガルヴォ山に向かって叫ぶ。

「ガルヴォ山の精霊よ。私は創造神、緑土のフリーネス。私の仲間である陽炎のソルトゥーを探しにここまで来た。

 どうか、この山に入ることをお許し願う」

 すると山はフリーネスの願いに応えるかのように神経を高ぶらせていたように張っていた聖なる気を和らげて、するとパラドン山の近くにいた小鳥や小動物が麓に寄ってくる。

 フリーネスが先に山道に足を踏み入れて、続いてリブサーナが乗っていたパラドンが山道に足をつける。

「俺たちも行くぞ」

「ああ」

 ドリッドとブリックも後から続いておそるおそる足を踏み入れた。二人はガルヴォ山に入ることができたのだ。

「あっ、じゃー僕も」

 ヒートリーグはバイクの姿からロボットの姿になって山道に入ろうとした時、突如見えない壁に押されたように弾き飛ばされて、地面に倒れる。

「な、何でぇ?」

 ヒートリーグがどうして山には入れなかったと唸ると、フリーネスが伝える。

「自然の精霊は機械生命体を嫌います。ましてや煙を排出するテクロイドなどはお断りだと」

「え〜」

 ヒートリーグがむくれると、ドリッドが言った。

「そうすねるなよ。お前は待っていろ」

 山に選ばれた三人と一頭はガルヴォ山の坂道を登っていき、しかも上に行けば行くほど空気が薄くなっていき、ドリッドとパラドンは息が苦しくなる。ブリックは人工臓器の塊である人造人間(レプリカント)であるため苦しくなることはなかった。

 ようやく坂道が終わり、大きな洞窟がぽっかりと口を開けていた。坂を登っている時は日差しで暑かったのに対し、洞窟は涼しく思えた。

「ここからソルトゥーの気配がします」

 フリーネスがドリッドたちに言う。

「暗そうだな......。一応照明は持ってきたが」

 ブリックは腰のポーチから小型の懐中電灯を出して、洞窟の中を照らす。

 洞窟の中は白と灰色と茶色の岩肌でモザイクアートのようで、三人と一頭の足音が高く響く。

 リブサーナ姿のフリーネスがソルトゥーの気配を頼りに真っ直ぐ歩いていると、足の速度を進める。走ることはなかったが、早歩きでドリッドとブリックもパラドンも後をついていく。

 幸い洞窟は迷路のような複雑さではなく、一直線だったため、迷ったりはぐれたりすることはなかった。

 そして洞窟の中に入って、だいぶ経った時のこと――。

「おお、見つかった」

 フリーネスが洞窟の中にある祭壇のような岩に一つの玉が納められているようにあるのを目にした。

 ルビーのような赤い透明の中に太陽の紋章。大きさはリブサーナの持っている結晶と同じ大きさであった。

「見つけましたよ、ソルトゥー。やはりあなたはここにいたのですね」

 フリーネスは喜んでソルトゥーの魂の結晶を手にして、洞窟から出ようとした時だった。ドリッドの携帯端末に連絡が入り、ドリッドはポーチから端末を取り出して通信のアイコンを押した。端末の画面からヒートリーグの姿が映し出される。

『こちらヒートリーグ! "あのお方"と名乗る者の部下が現れた! 救援願う!』

  ドリッドたちは折角ソルトゥーの魂の結晶を手に入れたというのに、ヒートリーグがピンチに陥っていることを知ると、急いで洞窟から出ることになった。

 ガルヴォ山の麓では、ヒートリーグがブリックがドリッドの乗っていたパラドンを守りながら敵の襲撃に陥っていた。

 ヒートリーグの前にいるのは、二〇体はいる機械の兵士に一人の人間型異星人(ヒューマンがたエイリアン)の男がいた。男は目深にかぶったテンガロンハットに口元は赤いスカーフで覆われて両手は皮手袋、厚手のシャツにフリンジベスト、紺の厚手パンツに革のフリンジブーツ、両手にはリボルバー式の拳銃が握られていた。兵士たちもテンガロンハットとスカーフとベストを身に付け片手を拳銃に変形させてヒートリーグに向けていた。

「観念しな。"あのお方"に反するテクロイドよ」

 男は低い声を出してヒートリーグに言った。

「お前たちの狙いは僕たちか!? 僕は倒されてもいいけど、仲間には......」

 ヒートリーグが男に返すと、男は言った。

「いいや、お前ら全員生け捕りにして、"あのお方"に捧げて褒美をたんまりといただく。三人と一体だけでも、たいそうな額だからな」

 男はヒートリーグにこう言うと、ヒートリーグはこの危機をどうするか判断していた。

(みんな来てくれ......)