6弾・3話 ヒートリーグの初仕事


 ウィッシューター号の司令室には他の艇員(クルー)も集まってきており、グランタス艦長が盤状モニターのコントロールパネルを操作し、盤状モニターから立体的に映像が映し出される。モニターに映ったのは青い軍帽と軍服を着た管のように長い首に鈎のような嘴を持つ白い鳥型異星人(エイリアン)の将校が映し出されたのだ。

『ワンダリングスの諸君、ご機嫌よう。私はパイ星域連合軍、ログネ星少将ヅーチだ。諸君に依頼を申してもらう』

 ヅーチ少将の映像はウィッシューター号内の翻訳機能によってグランタス艦長の母語であるインデス語に翻訳され、ヒートリーグにも届いて彼の頭部内のメインプロセッサーで言語処理されて理解する。

『パイ星域座標〇〇二n周辺に宇宙珍品のオークションが開催されるという情報が入った。オークションでは宇宙各所の大企業経営者や高官など社会の大物たちが多く集まるそうだ。

 そのオークション出品の中に違法売買されている物が混じっているとの小情報があった。

 オークションに出品される物は詳しく調べられなかったが、ワンダリングスにオークションの潜入と宇宙違法品の異星人の逮捕を要求する。連合軍の宇宙艇は一五時間後に到着させる予定だ。健闘を祈る』

 通信はここで切れ、映像もシャットアウトされる。

「違法品の混じったオークションの潜入と違法品売買人の逮捕か……。やや至難ね」

 アジェンナが腕を組んで呟く。

「すまないがピリンには出場させづらい任務だな……。ピリンが狙われてその召喚術欲しさにオークション出される可能性があるしな」

 グランタス艦長がピリンに目を向ける。

「おりゅしゅばんかー……。でもピリンのたしゅけがほしかったら、よんでね!」

 ピリンが他の艇員に向かって言った。

「リブサーナもこういう任務には慣れているから行ってもらいたいのだが……、まだ鎧と武器の修理が終わっておらんし」

 リブサーナは今の自分の装備品が使用不能なのを知って沈黙する。

「いや、あったでしょ。鎧と武器は壊れちゃったけど、連合軍から支給された戦闘服が」

 アジェンナがリブサーナに言ってきて思い出した。

「ああ、そうだったね。閉まっていたから忘れていた」


 リブサーナはアジェンナに促されて思い出す。

「さて、後はどうするか、だな……」

 グランタス艦長が手をあごに添えて考える。

「違法品のデータ徴収として私を派遣させてください」

 ブリックが自ら申し出る。

「ああ、そうだったな。後はアジェンナとドリッドに……」

 グランタス艦長がドリッドを指名しようとしたところ、ドリッドが口を挟んできた。

「いや、俺ではなくヒートリーグに行かせてやってください。現場実習ってことで」

「えっ!? 僕がオークションの潜入に参加!? あそこって機械も入れてくれるのかなぁ……」

 ドリッドに現場実習と言われてヒートリーグは困惑する。

「そうねぇ、ヒートリーグはあたしたちの護衛ロボットということにしておいておけばいいんじゃないの?」

 アジェンナがヒートリーグに言ってきた。

「そういう役割ね……。わかりました、行ってきまーす」

 ヒートリーグの出場も決まり、ワンダリングスは違法品売買人の逮捕のために潜入することになった。


 ウィッシューター号はパイ星域座標〇〇二周辺にあるというオークション会場の宇宙艇を発見した。それは全長七〇メートルもあり、高さは三〇メートルはある銀色と青の金属素材と特殊ガラスでできた鋭角な宇宙艇であった。ウィッシューター号は大型宇宙艇の死角になる衛星に停泊させて、オークション潜入のために正装したアジェンナ、ブリック、リブサーナが小型宇宙艇ミニーシュート号に乗って大型宇宙艇に向かっていった。ヒートリーグもウィッシューター号に乗っていったが、ヒートリーグだけで満席になり、他の三人は寄せ合ってミニーシュート号に乗っていた。

「せ、狭い……」

 左にブリック、右にアジェンナ、その間にリブサーナが座りぎゅうぎゅう詰めであった。

「ヒートリーグ一人でもう一機を陣取ってしまったんだ。我慢しろ」

 操縦するブリックがリブサーナに言った。

「オークション会場に着くまでの辛抱よ。それまで大人しくしてて」

 アジェンナもリブサーナに言った。

 二機の小型宇宙艇ミニーシュート号は大型宇宙艇、ギガンテノクティス号に入り、他にも多くの型や色や機能の異なる宇宙艇が次々に来ていた。ミニーシュート号を小型宇宙艇停泊所に泊めたリブサーナたちはミニーシュート号の中から出る。

「はぁっ、ようやく出られた〜」

 到着までぎゅうぎゅう詰めで座っていたリブサーナは手足を伸ばす。宇宙艇停泊場では人型や獣型などの近くの惑星や星粋の異星人たちがぞろぞろと宇宙艇から出てくるのを目にした。どの異星人も男はタキシードや燕尾服、女もフォーマルドレスや高級スーツを身にまとっている。リブサーナたちもベージュやグレイといった明るめの色のスーツやフォーマルで来訪していた。

「これを持つんだ。偽の招待状だ。これがないとオークション会場は潜り込めないからな」

 ブリックはリブサーナとアジェンナに招待状を渡す。小さな白いカードのようだが、手に触れると文字や暗証コードが立体的に浮き出るという仕組みであった。

「ヒートリーグは私たちのボディガードとしての役割だから招待状は必要ない。くれぐれもついてくるように」

 ブリックはヒートリーグに言うと、停泊場を出て、他の客と共に通路をくぐってオークション会場へ向かう。

 オークション会場は

赤い天幕のステージに電気式シャンデリアがいくつも下がり、パンや肉や菓子などを取ることのできるビュッフェ、白いクロスのかかった円状テーブルが模様のように置かれ、床は赤い絨毯が敷かれ、来賓客も人間(ヒューマン)型、獣型、鳥型、魚型、爬虫類型と様々で浮き交う会話もバラバラであるがその惑星や星域の独特さがあった。

「すごいなー、オークションって何を出してくるんだろう?」 

 ヒートリーグはオークション会場の様子を見て感心する。

「ヒートリーグ、あんまり出しゃばるんじゃないぞ。表向きは宇宙各所のコレクションの交換オークションだが、宇宙の違法物品を見つけなくてはならない。それが武器なのか薬品なのかわからんが」

 ブリックが小声でヒートリーグに注意する。会場の客たちは陽気に酒を飲んだりご馳走を食べたりセレブ用語の会話をしていたりと不穏な空気は感じられない。

 すると、ステージの天幕が上がってマイクを持った長い尾の猿人型異星人の男が現れる。

『みなさん、お待たせいたしました。これよりパイ星域ギガンテノクティス号で開かれる宇宙セレブコレクト品オークションを開始します。

 わたくしは当会場の司会を務めますログテ星出身のmr.トークでございます!』

 mr.トークは長い尾に黄色い毛と赤ら顔、紺色のスーツをまとった猿人型異星人の男で、ハキハキと会場の者に伝える。

 するとステージの上には白い幕のかかった大きめの物品が運ばれてくる。

『エントリーNo.1、カヅモ星出身トゥーバ氏出品の白肌の人面樹です!』

 オークション品運搬のログテ星人が商品のかけている布を引っ張ると、二メートル半はある白い木肌の人面樹が出てきて、葉はエメラルドのように深く、根元は大きめの四角い鉢に植えられていた。

「うわ〜、珍しい樹だねぇ」

「そ、そうね。けどこの樹って、案外普通の品っぽい……」

 ヒートリーグの人面樹の珍しさを見てはしゃぎ、リブサーナが樹を見て目を見張る。すると樹の出品者と思われる緑色のスーツを着たずんぐり体型の虫型異星人の男が現れて、「100」

と書かれた札を出す。

「スタートは一万コズムからです!」

 mr.トークがオークションが始まったことを来賓者に伝える。

「一五〇万コズム!」

「二〇〇万コズム!」

「三二〇万コズム!」

 人面樹を買いたがっている客たちが次々と叫び、この人面樹は五〇〇コズムで買われた。

『人面樹は五〇〇万コズムで競り落とされました。続きましては……』

mr.トークは司会を続ける。アジェンナとリブサーナは会場来賓者に出されたビュッフェのドリンクを飲み、ブリックは小型カメラにオークション品を一枚ずつ撮影して保存する。

 オークション品は次々と半貴石の玉座だの、金と宝石の箱庭だの、流星龍(ミーティアドライケン)が使っていた石の座だの、惑星マジェンの五世紀頃に作られた書物だのと次々と本物なのか作り物なのか判別しにくい物が出されていく。

『続きましてはエントリーNo.10。惑星ビーロのエメラルドローズです』

 ステージに白い植木鉢に十輪の花が咲いたエメラルドグリーンのバラが紹介され、来賓者たちを魅了させた。

「おおーっ、エメラルドローズだ!!」

「本当に美しくて素晴らしいわ!」

 エメラルドローズの美しさに来賓者たちは褒め称える。

『出品者はビーロ星のミレザ氏です。では一五〇万コズムから!』

「二〇〇万!」

「三〇〇万!」

「三七〇万!」

 エメラルドローズほしさに買い手が次々と出てくる。ヒートリーグはエメラルドローズを見てリブサーナたちに言う。

「本当にあれ、本物なの? 染めたりとかしていない?」

「うーん、確かに青や緑のバラってのは自然界生まれのものは希少だって聞いていたけど……」

 リブサーナがヒートリーグに返事をする。リブサーナの故郷、ホジョ星では自然界に咲くバラは赤や白や黄色で、品種改良でピンクやオレンジや紫、二色のまだらといったものしか存在せず、青や緑のバラなんて作りづらいらしいのだ。

「ビーロ星の緑のバラか……。これも撮っておかないとな」

 ブリックはエメラルドローズをカメラに収める。

「七八〇万コズム!」

 紫色の体に翅を持つ虫型異星人の紳士がエメラルドローズの値段に高額をつける。

「七八〇万コズムだって?」

「もう出せないよ」

「あ〜あ、欲しかったのにな」

 欲しくても手に入れられなかった来賓者が不満を出す。

『それではエメラルドローズ、七八〇万コズムで決まりました!』

 紳士が札束を出してエメラルドローズの鉢を受け取る。そしてオークションは行われていくが、二〇品出たところでオークションは終わり、違法品はつかめないままになってしまった。

「ガセだったのかしら?」

「連合軍がこんなミスをするはずもないのだがな……」

 アジェンナとブリックが話し合っていると、来賓者はぞろぞろと帰っていく中で、ヒートリーグがこんなことを言ってきた。

「あのさ、エメラルドローズなんだけどさ……」

「エメラルドローズ? あれはちゃんとビーロ星の人の許可を取って出した品だからいいのよ」

 リブサーナが言うと、ヒートリーグが首を横に振る。

「違う、違う。僕はエメラルドローズを目にした時、熱反応機能(サーモグラフィ)で調べてみたら、植木鉢の部分にバラとは違う生体反応があったんだ。何ていうか……小動物の卵みたいだった」

「ええっ!? それが連合軍の言っていた違法品なの? じゃあ今すぐ追いかけなきゃ! まだ遠くには行っていないはずよ!」

 アジェンナがヒートリーグから聞いた情報でエメラルドローズを買った者を追いかけて尋問にかけることにした。


 宇宙艇停泊所ではエメラルドローズを買った虫型異星人の紳士が二人の部下と共に楕円形の紫色の甲虫型宇宙艇に乗り込もうとしていた。

「いいか、このパールリザードの卵はバラの鉢に入れたまま運んでおけ! パールリザードの卵で漢方薬を作っておけば、もうかるからな」

「はい。わかりました」

 紳士に従って同じ型の黒いスーツを着た部下の男の一人が紳士に従う。

「ちょっと待ったぁ!」

 通路から声が飛んできて紳士と部下が振り向いて、そこには正装した男女と少女の人間型異星人、赤と黒のロボットが立っているのを目にした。

「おやおや、一体どうなされたのですか? 一緒に揃って。まさかこのエメラルドローズが今更になって欲しくなったとでも?

 残念ですが、これは私のものです。諦めてくれませんかね。まぁ、どうしてもっていうんなら、五〇万コズムで帰ってくれませんかね」

 そう言って紳士は懐から小切手を出そうとしたその時だった。

「しらばっくれるのはやめなさいよ。あんたが宇宙珍獣の卵を手に入れたバラの鉢に入っていることは知ってんのよ」

 アジェンナが両手を組んで紳士に言った。

「う、宇宙珍獣だって? 何をバカなことを……。わ、私は漢方会社の社長でエメラルドローズの花びらや蜜から作られるエキスで新しい漢方を生み出そうとわざわざオークションに参加して七八〇万コズムを出したんだ。

 一体何の根拠があってバラ以外の物を手に入れたっていうんだ!?」

 紳士は言い返した。リブサーナはヒートリーグの腰を叩いて説明する。

「このヒートリーグっていうテクロイドがね、バラの鉢植えの中の卵を見つけたっていうのよ。会場に入った時は護衛ロボットとして名乗っていたけど、本当は調査員なのよ」

 それを聞いて紳士は頭に血が上り、部下に命じる。

「こいつらを生かしておくな! 殺れ!」

 二人の部下は懐から小型の連射式小型マシンガンを取り出し、銃口をリブサーナたちに向けた。

「撃てーっ!!」

 紳士の掛け声で引き金が引かれ、弾丸の群れがリブサーナたちに向けられた。しかしヒートリーグがリブサーナたちを庇って盾になり、ヒートリーグの背中に銃弾はパラパラと落ちてひしゃげていた。

「た、助けてくれてありがとう……。ヒートリーグは大丈夫?」

 リブサーナがヒートリーグを気遣って声をかける。

「僕は機械生命体。鉛弾なんてへっちゃらさ」

 ヒートリーグの頑丈さを目にして紳士がぐぬぬと悔しがり、更に銃弾を聞いてオークション会場のスタッフが銃を持って駆けつける。スタッフの姿は魚型、爬虫類型とバラバラだが、共通は黒いスーツと赤い襟シャツであった。

「おいっ、お前ら、何をやっている!?」

 スタッフの男がリブサーナたちに暴言を浴びせる。

「連合軍の依頼によりパールリザードの無許可輸入の取り締まりに来た」

 ブリックがスタッフに向かって叫ぶ。

「さては貴様らか。招待状のいくつかが入力データと一致しなかった輩というのは! おい、取引しようじゃないか。このまま、エドルブ氏を見逃してやればお前たちをお咎めなしにしてやるが、取り締まるってのなら、お前ら全員始末してやる。さぁ、どうするか選べ!!」

 スタッフのリーダーらしい男がリブサーナたちに持ちかけた。スタッフは十数人もいて、大方が強力な小型拳銃、少数がライフルを所持していた。

「ええ、こんなに数がいるんじゃ、もうダメだわ」

 リブサーナが今の状況を目の当たりにして弱音を吐く。アジェンナとブリックがリブサーナを抱く。その時だった。まだ停泊させていた宇宙艇がガクンと動き出して、スタッフに向かってきた。

「うわぁ! 誰も乗っていないのに!」

 スタッフは驚いて動く無人の宇宙艇を見て銃口を向けるが、宇宙艇は突進してきた壁にぶつかり、大破して爆ぜたのだ。

 リリリリ、と火災警報を知らせつ非常音が鳴り、天井からスプリンクラーの水が吹き出る。

「お、お前ら。宇宙艇に何の細工をした!?」

 紳士ことエドルブはリブサーナたちに尋ねるが、リブサーナもアジェンナもブリックも「何のことやら」と白ける。

 その時、丸みを帯びた白と青の期待の連合軍の宇宙艇が二台やって来て、青い軍服の連合軍隊員が押し寄せてきたのだった。

『この宇宙艇の者たちに告ぐ! この宇宙艇は連合軍によって包囲された! よって逃げられることは出来ない!』

 こうしてギガンテノクティス号のスタッフ及びエドルブ一味は連合軍に逮捕された。


 エドルブ一味とオークションスタッフが連合軍の宇宙艇に乗せられて護送が済むと、ヅーチ少将がワンダリングスに声をかける。

「ワンダリングスの皆さん、違法品の発見とその売買人の取り締まり、ありがとうございます! こういう任務は正規の連合軍隊員では潜入しづらくて、いつも助かっています」

 ヅーチ少将はアジェンナに握手をしてお礼をのべる。

「はぁ……、でも私たちはオークション会場に入っただけで、後はみんな……このヒートリーグがやってくれてて……」

 アジェンナは苦笑いしながらヒートリーグを目で紹介する。

「どーも、ヒートリーグです」

 ヒートリーグはヅーチ少将にあいさつする。

「ほぉ……、君は違法品を発見し、エドルブたちを追いつめたというロボットが。ワンダリングスはいつの間にこんなロボットを開発したのやら」

 ヅーチ少将がヒートリーグを見つめていると、リブサーナが答えた。

「あ、ヒートリーグは造られたロボットじゃなくって、機械生命体っていうの。メカリウムって惑星の住民で、ロボットと違う点は……えーと……」

 リブサーナがヅーチ少将にわかりやすく説明しようとするが、上手く思いつかなく。

「まぁ、それはそうとビーロ星の絶滅危惧種のパールリザードの卵を見つけてくれてありがとう。報酬です、どうぞ」

 ヅーチ少将は懐から札入れを出し、札入れに入れていた小切手を出す。

「ご協力ありがとう、ワンダリングスの皆さん」

 この後、ギガンテノクティス号は連合軍に押収され、リブサーナたちもミニーシュート号に乗って衛星にで待機しているウィッシューター号のグランタス艦長に迎えられる。

「みんな〜、おかえり〜」

「ただいま、ピリン」

 ピリンがトコトコと駆け寄ってきて、リブサーナの膝に抱きつく。

「任務は無事終わったようだな」

「はい、ヒートリーグのおかげです」

 グランタス艦長が全員無事なのを目にすると、ブリックが今日の内容を報告する。

「ヒートリーグが? そりゃまたどうして?」

 ドリッドがブリックからの報告を聞くと、きょとんとなった。

「我々がオークションスタッフと違法品の買い手エドルブたちに追いつめられたところ、ヒートリーグが機械遠隔操作を使って、相手の小型宇宙艇を動かして、私たちを助けてくれたんだ」

 ブリックが教えると、ヒートリーグは軽く頷く。

「いやいや、あの時はみんなが危なかったから、ああするしかなかったし……」

 ヒートリーグは謙遜するように答える。

「今日の任務は思っていたよりサクサク進んだな。ヒートリーグはこれからもこの意気込みで活躍してもらうぞ」

「はい、グランタス艦長!」

 グランタス艦長はヒートリーグに今後の活躍を委ねた。

「あーあ、ピリンもかちゅやくしたかったな」

 今回もお留守番だったピリンがすねる。

「そんなことを言うな。まぁ、次こそはピリンが出れるかもな」

 ドリッドがピリンの頭をなでる。

「さてと……、ここから近い製鉄所は座標〇〇六にあるパイ星域の衛星製鉄所だな」

 グランタス艦長がコックピット窓のレーダー画面を見てみんなに言った。

「衛星製鉄所? そこへ行って何をするの?」

 次の行き先を聞いて、ヒートリーグが尋ねてくる。

「ああ、リブサーナの鎧と武器を直しによ。ヒートリーグが入ってくる前の任務で敵に壊されちゃったのよ」

「こんなことがあったのか」

 アジェンナの話を聞いてヒートリーグは納得する。

 ウィッシューター号はパイ星域にある衛星製鉄所へ向かっていった。