6弾・4話 オーロリウムを探しに


 パイ星域の中にある灰色の衛星群の中に、ひときわ大きい衛星があった。中は空洞で、内部には大きな炉や衛星の一部を台状にしたもの、他にも剣や盾の鋳型やハンマーやヤットコなどの道具が揃うここパイ星域の宇宙製鉄所。ここを営んでいるのは体内に溶岩熱を持ち体から熱を出し、口から火を吹くラーヴァ星人たちである。ラーヴァ星人は男で二メートル、女でも一.九メートルの大柄な人間(ヒューマン)型異星人(エイリアン)で素肌に触れると一瞬で火膨れになり、火に弱い種族なんかは死してしまうのだ。

 宇宙製鉄所のラーヴァ星人の男たちは上半身裸になって、フイゴで火を大きくしたり、熱い鉄を金属のハンマーで叩いて変形させたり、自身の熱で砕鉄を溶かすために竈には入ったりと作業していた。

 また製鉄所の中も相当熱く、室温は四〇度以上もあり、入ってすぐ汗だくになってしまう。宇宙製鉄所の中には熱気を宇宙空間に出すための排熱装置も設置されていた。

 ワンダリングスはリブサーナの鎧と短剣を直してもらうために入ったのだが、口ひげにたてがみ髪のラーヴァ星人の職人がリブサーナの鎧を見て調べる。ラーヴァ星人は自身の熱で金属を溶かさないために防熱手袋をはめている。

「う〜ん、純鉄と鉛はともかく、オーロリウムは今はないんだよな」

 職人が鎧を見て小さなハンマーで叩いて素材を調べて呟いた。

「えっ、それはその……直せない、ってことで……?」

 リブサーナがラーヴァ星人にもわかるパイ星域の言葉で返事をする。

「いや、直せるには直せるんだけど、自分たちでオーロリウムを採りに行ってくれないか? オーロリウムは近い点でパイ星域座標〇一一にある。ただ今は我々は他の製鉄もしなくちゃいけないから行けないんだ」

「あっ、そういうことですか。ありがとうございます……」

 リブサーナは熱気で汗だくになりながらも、職人に礼を言った。


 製鉄所の出入り口に停泊させているウィッシューター号に戻ってリブサーナはグランタス艦長たちに鎧の素材であるオーロリウムはパイ星域座標〇一一にあると伝えた。

「しょこにいけば、よろいのざいりぃーがありゅんだね?」

 ピリンが尋ねてくる。

「うん。自分たちで採りに行ってくれ、って言われた」

「それにしてもリブサーナ、すごい汗だらけ。着替えてシャワーを浴びなさいよ」

 アジェンナがリブサーナに言った。

「はいー。あと、オーロリウムのある所、調べてくれる?」

「わかった」

 リブサーナに促されてブリックが操縦席のコンソールを叩いて座標〇一一を調べる。

 リブサーナがシャワーと着替えを済ませている間にパイ星域座標〇一一の図面と情報がコクピット窓に映し出される。

「座標〇一一まで六時間二四分。情報は……ないな。となると、知的生命体のいない星か?」

 行き先の星には必ず主要種族や文明、文化や環境などの情報が表示されるが、情報がなかれば、それは発展途上の星か未開の惑星なのだ。

「それではオーロリウムを探しに出発!!」

 グランタス艦長が指示を出し、ウィッシューター号はパイ星域の衛星製鉄所を出て、目的の星へ向かっていった。


 降り立った惑星は巨大な大陸と壮大な青い海、大気が清浄な自然の惑星で、ワンダリングスはウィッシューター号を岩戸雑草だらけの荒地に着陸させて降りる。

「けっこーへんぴなわくせいだぉ」

 ピリンが降り立った惑星の様子を見て呟く。

「だがこの惑星は鳥も虫も魚も獣もいる。私が開発した元素探知機がオーロリウムのありかを示している」

 ブリックが片手に円と長方形を足した装置を見て言う。元素探知機は円がレーダー画面で長方形が求める物質の元素を入力するキーになっている。画面には目的の元素を示す地図と赤い点が映し出されている。

「わしはウィッシューター号で待機している。何かあったら連絡するように」

「ラジャー」

 リブサーナ、ドリッド、ブリック、アジェンナ、ピリン、ヒートリーグはオーロリウムのある場所へ向かっていった。持ち物には携帯食料や救急キットなどの必要限の道具が入ったウェストポーチ、武器や防具を入れる物質亜空保管カプセル、そして連絡用の携帯端末である。

「おやっ、これは……」

 ブリックが行き先の場所に行く途中、高台から見て呟く。地平線にそびえ立つ大小の山は木々に覆われ、草が生い茂る平原には様々な木々が生え、池や泉が不規則に点在し、大きな長い鼻と曲がった牙と大きな耳を持つ巨大な毛むくじゃらの生物が群れをなして草を鼻でちぎって食べていた。

「あの生物は何だ? この星の支配種族か?」

 ヒートリーグが生物を見て呟く。

「あれはまんもしゅっていって、バオちゃんのしんしぇきみたいなどーぶつだぉ。このどーぶつってしゃむいところにしゅんでんのおがおおいんだぉ」

 ピリンがヒートリーグに教える。リブサーナたちが降り立った地は少し肌寒いが暖かく、マンモスたちは山を降りて平原の草をかじりに来たのだ。

 するとマンモスたちのいる場所の東あたりから小さな動物たちの群れが出てきたのだ。数十頭のマンモスたちはそれを見て逃げ出し、逃げ遅れた二、三頭が動物の群れに捕まった。その生物は身の丈一.二メートルから一.四メートルの二本足で立つ生物で頭は箒のような髪の毛に体の毛は深く、縞模様やまだら模様の毛皮を腰に巻いており、手には木で出来た柄に石でできたハンマーや斧や槍を持ってマンモスに襲いかかっていたのだ。

「狩りだ……。彼らはマンモスを捕らえて肉を食べ、骨を武器や生活用具にし、皮を衣服にしにここへ来たんだ」

 ブリックがマンモスに襲いかかる生物を見て言った。

「もしかしてここ、原始人の星!? てことは、まだ文明も文化も達していないから、オーロリウムも持っててもいいてことになるのよね?」

 アジェンナが星の住民の様子を見て解釈して原住民の許可を取らなくても楽して手に入ることに喜ぶ。

「それで、オーロリウムはどこにあるの?」

 ヒートリーグがブリックに尋ねるとブリックは元素探知機の画面を頼りにして伝える。

「ここからは東へ二キロ先にある岩の洞窟にある。結構歩くが行くぞ」

 一同はオーロリウムのある岩の洞窟に向かって歩きだした。空は淡い青で雲が浮かび、風が吹けば涼しいが止むと暑く、周囲の地面には雑草が生い茂り、羽虫が飛び交い、空には灰色にオレンジの胸の鳥が羽ばたいていた。

「着いたぞ。ここにオーロリウムがあるようだ」

 ブリックが灰茶色の岩肌の横穴を見つける。灰茶色の岩山には切り立った崖やその山に旋回する大型の猛禽類を思わせる鳥もいた。

「うーん、この大きさだと僕には通れないな……。入って探すのを手伝いたいんだけど……」

 ヒートリーグが横穴に入ろうとするが、彼の大きさでは通り抜けることが出来ないため、ヒートリーグは横穴のそばで待つしかなかった。

 横穴に入ったリブサーナたちは足元や天井の岩にぶつからないように中を進んでいった。四〇歩進んだところで灰茶の岩壁の隙間に白銀の小石が挟まっているのを見つけた。するとブリックの持っている探知機がピーピー、と音を鳴らした。

「間違いない。オーロリウムだ。よし、もっと進むぞ!」

 一同は奥へ進んでいき、百歩進んだところで広くなったと感じると、そこには白銀の金属が灰茶の壁や地面からいくつも出ているのを目にしたのだ。

「おお、オーロリウムだ。掌一つ分でも結構な価値なのに、こんなにあると売れば儲かるんじゃないのか!?」

 ドリッドがたわわに実った果実のようなオーロリウムを見て呟く。

「そんなやましいことを考えるな。リブサーナの鎧を直す分だけでいいんだから」

 ブリックがドリッドに注意する。

「それじゃあ、オーロリウムを回収しなきゃね」

 リブサーナは自分の鎧を直せる文だけのオーロリウムを集め始めた。

「集めたらとっととここを出ようや」

 ドリッドがリブサーナに言いかけたその時だった。


 ズガーッ、ゴゴゴゴ


 洞窟内でやたらと響く轟音と激しい揺れが起こってリブサーナたちを驚かせた。

「なっ、なんだぁ!?」

 ドリッドは突然の出来事に姿勢を崩し、ピリンはアジェンナの腰にしがみつき、リブサーナは両手に抱えていたオーロリウムを手離し、両手で頭を抱えて膝まづき、ブリックは震動がどこから来ているか辺りを見回す。

 ゴウン、ゴウンとけたましい音が近づいてくるのが分かり、リブサーナたちのいる所の壁の一箇所にヒビが入り、そこから石片やオーロリウムの欠片の散らばりと共に一機のドリル型掘削機が出現する。機体は暗紫色で機体の上から一人の異星人が現れる。

「おめぇら、何者だ!?」

 その異星人は甲高い声を出してリブサーナたちに尋ねてくる。その異星人は臙脂色の体に黒縁が入り、胴体や腕脚に節を持ち、頭部に二本の長い触角を持虫型異星人でベージュのつなぎを着ていた。

「そ……、そういうあなたこそ何者ですか!?」

 リブサーナは移動掘削機と共に現れた人物に言い返す。

「俺か? 俺ぁ、モモア星人のピーデロっていうんだ。見てわかるだろ? オーロリウムの回収に来たんだ」

 ピーデロの言葉を聞いてリブサーナは思わず問を求めてしまう。

「オーロリウムの回収? 何のために?」

 それを聞いてピーデロは眉間にしわを寄せて口を尖らせる。

「そんなこと聞いてくるのか、おめぇらは? 俺ぁ、ある星のお偉いさんに頼まれてオーロリウムの回収に来たんだ。今までに三トンも集めたんだ。目標まであと二トンってとこだ」

 ピーデロの話を聞いてドリッドとブリックとアジェンナは首を傾げる。ピーデロは軍人でも戦士でもなさそうな人物っぽいのに、何故立派な掘削機を使って、しかもオーロリウムを五トンも集めようとしているのかが引っかかったのだ。

「聞きたいことがある。この掘削機はどこで手に入れたんだ? あと今までに集めたオーロリウムはどこに保管しているんだ?」

 ブリックはピーデロに尋ねてくる。

「何で俺と関係のねぇおめぇらが聞いてくるんだ?」

「それはだな……、ここの星の住人たちに迷惑がかかるからだ。彼らは知能は発達していないとは言え、これ以上自分たちの土地を他所者である我々が手出しをしたら負傷者が出る恐れがあるからだ。我々が回収するオーロリウムは少しで済むが、君は一トン以上もオーロリウムをほしがるのなら、ここを去って欲しい。金属の掘りすぎで土砂崩れが起きてもおかしくはないんだ」

 ブリックはピーデロに伝えた。

「しょーだよ。オーロリウムほしかったりゃ、ほかのほしでもいいはずだぉ」

 ピリンも言った。だがピーデロは注意されると納得するどころか、カチンとなったのだ。

「何だと? お前ら、何様のつもりで俺に説教するわけ? この星の奴らのことも考えろ、だと?

 いい度胸じゃねーか。邪魔するってのなら、容赦はしねーぞ」

 そう言うなり、ピーデロは懐からある物を取り出してきた。

「ライゾルダー!!」

 それは白い半透明状の紡錘型のカプセルで、そこから白いいくつかの白い小虫が出てきたと思ったら、地面に着くと、一.八メートルの身の丈に白い体の虫型異星人のような姿になったのだ。

「シ〜ラ〜、シ〜ラ〜」

 虫型異星人と違う点は知能が低く人語を話せないようだった。

「うわっ、何だ、こいつら!? 気持ち悪ぃ〜」

 ドリッドがライゾルダーの群れを見て引く。

「髪の毛の中に入るこむシラミみたい」

 リブサーナが呟くと、ピーデロは「その通りだ」と答えた。

「こいつらは宇宙シラミに改造を施した量産型の雑兵だ。資源は宇宙シラミだからどんどん造れるって訳だ」

「よくこんなものが造れたわね……」

 アジェンナが腰から携帯銃(ハンドライフル)を取り出してエネルギーカートリッジを装填する。

「だけどライゾルダーを造ったのは俺じゃないんでね。ライゾルダー、こいつらの血を吸い尽くせ!」

 ピーデロはライゾルダーに命令し、ライゾルダーの群れはリブサーナたちに襲いかかってくる。ライゾルダーは動きが素早く、自身の腕をカギ爪や鎌や斧に変えて振り下ろしてきた。

「うおっと!」

 ライゾルダーの刃先がドリッドの上着の表面を切りつけてきた。

「こいつらと戦うには武装しねーと!」

「ああ」

 ドリッドの声でブリックとアジェンナも頷き、物質亜空保管カプセルを取り出して胸鎧と手甲とすね当てを装着する。防具を身につけたドリッドたちはライゾルダーの刃先を手甲で受け止め、腰に提げていた携帯銃を撃ち放つ。オレンジ色のエネルギーの弾丸がライゾルダーに当たると火花を立てて、米粒ほどの宇宙シラミとなって倒される。

「きゃああーっ!!」

 鎧が直っていない普段着のチュニックと半ズボン姿のリブサーナに数体のライゾルダーが襲いかかってきた。

「サァーナ、あぶない! エステ・パロマ・ダ・ドレーク!!」

 リブサーナの危機を見てピリンが宇宙真珠と紅水晶でできた花の杖を振り、小さなドラゴンの子供、ドラゴンキッドが煙と共に現れてピリンの故郷のフェリアス星から召喚される。

「ドレちゃん、しろいやちゅらをやっちゅけてぉ!!」

 ピリンの命令でドラゴンキッドは口から火を吐き出してライゾルダーを炎に包まれて断末魔を上げて火だるまになり、燃えて灰になった。ピーデロはライゾルダーが全員倒されたのを目にすると、あることを思い出した。

「たったこれだけの人数でライゾルダーをあっという間に倒してしまうとは……。こいつらの顔、どこかで見たような……」

 ピーデロは尻のポケットに入れていた一枚の紙を取り出して広げる。それはお尋ね者の顔写真と懸賞金が表示されていた。文字は複雑な綴りの形であった、ピーデロは読むことができ、顔写真には何とワンダリングス六人の顔写真だったのだ。

「間違いない、ワンダリングス副司令官ドリッド、乗組員ブリック、アジェンナ、ピリン、リブサーナ……。艦長のグランタス=ド=インデスはいないが、こいつらだけでもかなりの懸賞金だ!」

 欲に絡れたピーデロはほくそ笑んでドリル掘削機に乗り込んで動かした。エンジン音が入り、ドリルが回転し始める。

「危ない! 突っ込んで来るぞーっ


 ドリッドがピーデロの操縦するドリル掘削機が自分たちの方へ向けられているのに察すると、仲間たちに叫ぶ。ドリルの回転音と共にキャタピラの音が洞窟内に響き、リブサーナたちは散り散りなった。

 ドゴォーン、とドリルの先端が岩壁に突き刺さり、天井から小石や砂が落下する。

「おい、こんな狭い場所で暴れたりなんかしたら、お前まで生き埋めになってしまうぞ!」

 ブリックがピーデロに注意をするが、ピーデロは開き直る。

「それがどうした。俺にはドリル掘削機があるからいい。自分たちは生き埋めにされたらの方法はあんのか?」

「あ!」

 リブサーナたちは顔を見合わせる。確かにここにいる五人がピーデロによって生き埋めにされたらひとたまりもない。それに洞窟内では携帯端末の電波はウィッシューター号にいるグランタス艦長の元には届かない。

「そうだ、ヒートリーグが洞窟の外にいた! ピリンちゃん、今すぐ外に出てヒートリーグを呼んできて!」

「うん、わかった」

 リブサーナはヒートリーグの存在を思い出すとピリンに行かせようとしたが。ドリッドが制した。

「いや、お前が行け。リブサーナ!」

「何でよ?」

 リブサーナが尋ねると、ブリックが答える。

「君は防具を持っていない。このままで戦ったら大怪我するに決まっている。ピリンは妖獣召喚で補うことができる」

「うう……」

 リブサーナは口ごもるが、確かにブリックの言う通りだと思った。そして踵を返すと、ドリッドたちに言った。

「わかったよ。ヒートリーグを呼びに行く。ちゃんと助けに行くから!」

 リブサーナは重機を持つピーデロと戦うドリッドたち四人を後にして、洞窟を出て入口に向かっていった。


「さっきから地響きの音がするけれど、ここって震度の激しい地域なのかな? 通信したいけど電波は届かないし」

 洞窟の出入り口で待っているヒートリーグは中に入った仲間たちの行方を気にしていたが、出入り口はヒートリーグの背丈では小さすぎて入れなかった。ふと洞窟から靴音が鳴ってヒートリーグが耳を傾けると、リブサーナが出てきた。

「あれ、リブサーナ。他のみんなは?」

 リブサーナはヒートリーグにしがみついてきた。

「ドリルのついた掘削機を持った異星人が現れて、わたしたちを邪魔だと言ってきて襲いかかってきたの……。わたしは防具も武器もないからって出されたんだけど、ヒートリーグ、助けて!」

 リブサーナに頼まれてヒートリーグは頷いた。

「敵はドリルのついた掘削機を持っているって言っていたよね。そしたらこの近くにドリルで掘った穴があるかもしれない。そこからなら僕も行けるだろう」

「うん、でも……」

 リブサーナは辺りを見回した。洞窟の岩場は小山とはいえ、距離は軽く三キロ以上もあった。

「なら僕に乗っていって。ヒートリーグ、アナザーフォーゼ!!」

 ヒートリーグがそう言うと、ヒートリーグの頭が引っ込み、手足が折りたたまれ、ヒートリーグは一台のバイクに変形した。急速に適した曲線状のフォルムバイクである。

「ええ〜っ!?」

 ヒートリーグが人型からバイクに姿を変えたのを目にしたリブサーナは目を丸くする。

「さぁ、乗って! 人間なら数十分のところ、僕は数分で行ける!」

「うん!」

 リブサーナはバイク姿のヒートリーグに乗り込み、更に安全のためのフルフェイスヘルメットをヒートリーグが出してくれた。リブサーナがグリップを握ると、ヒートリーグは起動してエンジン音が鳴る。

 リブサーナを乗せたヒートリーグはタイヤを走らせ、平原を駆け出していった。

「しっかりつかまって!」

 リブサーナはバイク姿のヒートリーグにつかまり、ヒートリーグは突風のごとく走る。カーブして曲がり、あっという間に小山の裏側にやってくることができた。

「本当に早くこれた……」

 リブサーナはヒートリーグから降りて、ヒートリーグはバイクから普段の人型の姿に戻る。そして小山の麓に大きな穴があるのを見つける。

「やっぱりあった。この大きさなら僕も入れる。行こう」

 ヒートリーグが先に入り、後に続いてリブサーナも入る。穴の中は真っすぐに掘られていたから迷うことはなかった。リブサーナはヒートリーグの後を追っていると、かすかに光る物を目にした。オーロリウムかと思っていたら、それは緑だった。あまりにも綺麗だったので、リブサーナは手にしたのだった。


 一方、洞窟ではドリッドたちはピーデロがドリル掘削機で仕掛けてくるのでへばっていた。携帯銃のエネルギー弾を向けてもドリルから発する低周波で跳ね返され、手薄になっている左右と後ろを狙ってもピーデロが掘削機を動かそうとするので出来なかった。

「へへへ、お前ら四人だけでも四〇〇コズムが手に入るんだ。"あのお方"にお前らを捧げれば、俺も出世できるんだ。観念しな」

 ピーデロがドリッドに向かって言った時だった。ピーデロが掘った穴から赤と白の機体のロボット――ヒートリーグが出てきて、ヒートリーグは拳でピーデロのドリル掘削機を叩き潰した。機体は穴が空き、その衝撃でピーデロは転がり地面に倒れる。

「うわっ、何だお前は!?」

 ピーデロはヒートリーグを見て驚いた。

「みんな、大丈夫!?」

 穴からヒートリーグが出てきて、仲間たちに声をかける。

「ああ、何とかな」

 ピーデロは掘削機を壊されて形勢が逆転してしまうと、尻込みをした。ドリッドがピーデロに言う。

「助かりたければここを去るんだな。お前だって命が惜しいだろ?

 ピーデロは拳を握り、自身が掘った穴に逃げ込んだ。


 トラブルは起きたものの、リブサーナの鎧を直すためのオーロリウムが手に入り、一同はウィッシューター号に戻り、原始惑星を去っていった。

「ヒートリーグが外にいてくれたおかげで、みんなを助けられたんですよ」

 リブサーナは衛星製鉄所へ帰る時のウィッシューター号で任務中の出来事をグランタス艦長に話した。

「いいな〜、サァーナ。ヒートリーグのバイクしゅがたにのれて」

 ピリンが話を聞いて羨ましがる。

「今度はピリンも乗せてあげるよ」

 ヒートリーグがピリンに約束する。

「あとそれと、行った星の洞窟でオーロリウムを集めている時にこんなのを見つけました」

 リブサーナは懐からある物を出して、艦長たちに見せる。それは鶏卵ほどの大きさの結晶だった。色は緑で中に木のような紋章が入っていた。

「きれーだなー。ピリンもほしーぉ」

 ピリンが結晶を見て羨んだ。

「これは見たこともないな。まぁ、リブサーナが持っていろ。ま、危ない目に遭ったが、何とかリブサーナの鎧は直せるな」

 グランタス艦長が言った。リブサーナが手に入れた結晶については次の機会で。