4弾・9話 リブサーナが宇宙進出した後のホジョ星


 ラムダ星域の東端にある農業惑星ホジョ。その惑星は広大な大地と森林と草原、水資源や清浄な空気に恵まれた自然惑星である。

 ホジョ星人は人間型星人(ヒューマンがたエイリアン)で白や黄色や褐色の肌を持ち、森や川や湖の近くに村町造り、土を耕し種をまき水をやり肥料を与え、麦や豆や米などの穀物やホジョ星でしか育てられない野菜・果物・薬草を育て、日々の糧を生み出して暮らしていた。

 育てた作物は他所の家や村町の作物と交換したり、ホジョ星にやってきた異星人(エイリアン)たちがホジョ星の作物を手に入れるために他の惑星の鳥獣肉や魚・野菜や果物・金属などの鉱物資源や照明などに使うエネルギー資源と交換したりと豊かに過ごしてきたのである。

 そんなホジョ星にも王制というものが存在し、ホジョ星の最も広い大陸に王都があった。王都は木材や粘土を固めて焼いたレンガや純白の漆喰を使った一、二階建ての庶民の家と違って、三〜四階建ての長屋が多く、芸術品に使われることが多い光磨石の塊を積み上げた家もあり、壁の色が白や水色や黄色といった色付きで屋根の色も上質の粘土を使った物が多く、道も石ころや雑草ばかりの野道と違って波模様やまだら模様の石畳が使われ、王都に住む住民も村民のようにホジョ木綿やホジョ麻の服を着ている者よりも絹や毛織物やホジョリンネルといった庶民から見れば高級な布を使った服や靴や帽子を身につけた者が多く、長屋の一階を店としてあてがう家庭もあった。

 市場は常に活気があり、新商品を売ろうとする帽子屋、魚を値切ろうとする貴族仕えの女中、親が商売している間に路地裏で鬼ごっこや縄跳びやケンケンパなどで遊ぶ子供たちの姿が見られた。

「白花キャベツが今日は安いよ!」

「鋳掛屋でございます! 鍋・釜・やかんの修膳をいたします!」

「干しイチゴ入りの糖蜜パンはいかがですかー」

 ホジョ星の王都ではいつも賑やかな人々の声が響き渡っていた。中には初めて王都にやってきた村民や非ホジョ星人の異星人(エイリアン)も来ており、王都の美しさに見とれたりホジョ星の作物や名産品で目が釘付けになる者もいた。異星人(エイリアン)の客は王都の商人には格好の獲物で自分の商品をたくさん買わせようとする者もいた。

 広大な平原の中に造られた田畑や村のある場所や郊外のホジョ星人や異星人(エイリアン)が訪れる王都から少し離れた谷を越えた先に岩場の中に一つ所巨大な城砦があった。

 灰色や茶色の岩の中に氷柱のような岩が屋根で黒光りの壁や床や天井の部屋がいくつもあるこの城砦はホジョ星の現在の王の住まいである王城なのだ。兵士は黒鉄の鎧兜と斧槍でかためて城門や城の周囲を見回りし、城の中では白いエプロンとコック帽姿の料理人たちが壁も床も石で出来た厨房で野菜の泥を洗ったり枝角牛をさばいたり大麦・小麦粉をこねて

城に居る人数分のパンを作っているところだった。

 部屋では大臣たちが庶務や財政管理の帳簿をつけていたり、白いフリル付きの頭巾とエプロンを身につけた女中が床を掃いたり井戸水を汲んで洗たくしていたり三毛羊の毛を糸車で回して糸を紡いでいた。

 さて、城の中枢には王座があり、王座には金糸縁の赤いじゅうたんが敷かれ、天井には金細工と高級ガラス玉のシャンデリアが下がり、王座の後ろにはホジョ星の作物の麦や米や豆などの絵が入った緑のタペストリー、王座は高級木材である白光樹(ブラトリズ)を使い更に黒い別珍を背と座位に張ってある立派な物であった。

 ホジョ星の現在の王、ゴラスベーノは現在二十五歳になる。ゴラスベーノとはホジョ星の言葉で「金の豆」を意味する。「金の豆」の通りに髪は実った豆畑のように緑がかった金髪で金の双眸、肌は赤みがかった黄色で長身に勇ましい体格、着ている服もビロード製の朱色のガウンに黒い水牛の革靴、首には金の王章付きの鎖に指には赤や青や緑の宝石の指輪、王冠も金にルビーとダイヤモンドをはめ込んだ逸品である。

「……して、ディアーノ大臣。ZK―7地区のエヴィニー村が壊滅した原因はつかめたか」

 ゴラスベーノ王はZK―7地区に調査に行かせた外務防衛大臣に尋ねる。

「はい、全く酷い有様でしたよ。家畜も絶え、家は大方が焼かれて、村の者たちは誰が弔ってくれたのかは知りませんが、石の墓標が立てられ、鍬や鋤などの生活用品が墓土の上に置かれていました。……あとはラサの花です」

 黒髪に黒いあごひげに大熊の様な体格のディアーノ大臣が十数日前に起きたエヴィニー村の調査結果を王に報せる。

「生き残った者はいないのか」

「そこまでは……わかりませぬ。生き残ったとしても、男は奴隷、女は娼婦として売られてしまうのが当然の結果かと……。

 まさかラムダ星域の辺境の惑星であるホジョに宇宙盗賊が現れるなんて……」

 ディアーノ大臣は呟いた。宇宙盗賊がホジョ星に来ることは滅多にない。それも王都や豊かな作物や家畜の多い領地ならともかく、何故王都から歩けば四日、馬車でも一日半かかる人口二〇〇人のエヴィニー村に現れたのか、ゴラスベーノ王は不思議でたまらなかった。何らかの名産品があった訳でもないのに、王都郊外の土地とはいえ、村を一つ滅ぼされたことで王は民を救えなかったことに悩ませていた。

「陛下、エヴィニー村が滅ぼされる数ヶ月前にエヴィニー村に行ったことのあるヴィターニ村の者がこのような情報を聞いたことがある、とおっしゃったのです」

「それは……?」

「何でもエヴィニー村のサイの目麦と三叉人参と白甘豆の作農家にペトラスと妻グランナニエーラには息子一人と娘が二人いて、上の娘が年明けの冬には近隣の村に住むパルプリコという村長の息子と婚約していたようです。私が王城に帰る前にパルプリコの住むラドヴィー村によってみて、エヴィニー村の襲撃事件を話してみたら、彼は大そう嘆いていましたよ」

「だろうな……。村ごと婚約者が喪なってしまったのも無理はない。心の回復にも時間がかかるだろう」

 ゴラスベーノ王はエヴィニー村にいた婚約者が宇宙盗賊のせいで亡くなったラドヴィー村の村長の息子の話を聞いて情けを感じた。

「はい。あと、エヴィニー村とはまた別の村ではエヴィニー村が滅んでから少しの間、一隻の宇宙艇がエヴィニー村の近くに着陸するのを目にした者も幾人かいるそうです」

 ディアーノ大臣が続けて言った報告を聞いて、ゴラスベーノ王は耳を傾けた。

「そのやく半日後に宇宙連合軍ラムダ星域支部の宇宙艇が二、三隻エヴィニー村近くの無人地に着陸して去っていったそうです。連合軍は宇宙盗賊を連行しに来たのでしょう。……ただ、連合軍でないもう一隻の宇宙艇の方が気がかりです」

 ディアーノ大臣はエヴィニー村周辺に住む者の手掛かりを要約しながら王に報告する。ディアーノ大臣の報告を聞いて、ゴラスベーノ王は手を顎に添えて考え込む。

「我々ホジョ星民は連合軍に加入していないから連合軍部内の事状や近況はよくわからないが……、独立組織でありながら連合軍に加担する自由戦士団、もしくは賞金稼ぎなのかもしれぬな。

 ホジョ星は連合軍に非加入だから連合軍に直接交渉はできないが……。もしホジョ星に元連合軍や連合軍と関連性のある者と出会ったら城に連れて来て尋問せよ。『エヴィニー村の襲撃事件及び壊滅の件について、連合軍でも宇宙盗賊でもない宇宙艇及び乗組員について知っているか?』と」

 エヴィニー村の件は決して迷宮入りにさせてはならぬぞ。いいな」

「はっ」

 ディアーノ大臣は深々と頭(こうべ)を垂れて王座の間から去っていった。

 ゴラスベーノ王は三年前に亡くなった先代王である父の言葉を思い出していた。

「ホジョ星人は実りの民。日々の糧を耕し蒔いて水を与えて光を浴びせる。男も女も子供も老いも富める者と貧しい者も関係なく役立たせる。決してからしてよい苗などないのだ」

 しかし、ゴラスベーノ王は自分の知らないうちに一つの群れの苗を燃やされてしまったことに悔んでいてたまらなかった。仮にわずかな生き残りがいたとしても、「どういて助けてくれなかった」と糾弾されても仕方がないと覚悟していた。


 宇宙盗賊によって家々が燃やされて炭化した木材と家の基礎、丸く盛られた土の下には宇宙盗賊によって命を狩られた村民や家畜が眠るエヴィニー村には十数日の間に黄色がかった緑の草が所々生え、翅のある虫や小鳥が訪れるようになった。そのエヴィニー村から北東へ三キロほど離れた場所に、平和だったエヴィニー村よりももっと豊かな野菜や果実、花や穀物の畑がいくつもあり、麦わら帽子にホジョ木綿とホジョ麻のシャツやズボンやスカート、木の繊維の短靴を身につけた村民が畑の作物に水や肥料を与え、作物に寄生する雑草を抜き、枝角牛(ブランチカウ)や三毛羊、縞毛豚やマダラガチョウや二毛鶏(にもうけい)を連れて草原に放牧させたりする様子が目に映るラドヴィー村。村人の中には畑の手入れや家畜の放牧の他、村の女が井戸の近くや池に行って板と砧で洗濯をし、ホジョ木綿やホジョ麻や三毛羊の毛の毛を糸巻き棒と糸車で糸束にしたりする嫁入り前の娘、紡いだ糸を機でおる女 、織りたての布をブラウスやエプロンに仕立てて色糸で好きな刺繍をする娘、ハンマーで鉄や鉛や銅を叩いて鍬や鋤や斧を作る鍛冶屋、川で獲ってきた魚を草や木の枝で編んだかごに入れて売り歩く漁師、数種の木を赤黒く焼いて売り物の炭にする炭焼の姿があった。幼い子は学校や家の手伝い、大きな子らは薪割りや川辺に行って水汲みなどの作業をしていた。

 どの家も木の板や枝を合わせて野草や麦わらで屋根にした家が多く、学校や教会は粘土を固めて焼いたレンガの建物で、村の奥にはセルロという樹を家を囲む垣根にし、庭には白い石造りの水がめを持った乙女の像の噴水があり、赤や白や黄色の色とりどりの花が植えられた花壇、村民の家六軒分の大きさもある二階建ての白いレンガの壁と赤い石瓦の屋根の屋敷があった。ラドヴィー村の村長の邸宅である。

 ラドヴィー村の村長邸はどの窓も枠は高級木材の黒い木肌の黒芯樹を使っており、玄関の戸に至っては木の戸に金箔を塗った物で、色付きガラスで装飾されていた。

 どの部屋も廊下も白い壁紙に毛織のじゅうたんが敷かれ、主とその一家の部屋には立派な浮彫のタンスや天がい付きのベッド、棚付きの机といった立派な家具が多く、その屋敷の一角には腰掛け椅子に座り、うなだれている青年がいた。

 直毛の黒髪、白い肌、赤みがかった褐色の瞳にべっ甲縁の眼鏡、やや細身の体躯、黒い上下の服を身に包んだこの青年はラドヴィー村の村長の息子、パルプリコである。

 パルプリコはエヴィニー村に住む小作農の長女、ゼラフィーヌの婚約者であった。そもそもパルプリコは二年前程前に同じ村の青年たちに誘われてエヴィニー村の夏祭りにやってきた。

 村の広場では串焼き肉や飴細工、揚げ菓子や木工のおもちゃや色染めのハンカチなどの屋台がいくつもあり、糸繰り人形による人形劇や旅芸人の犬やロバを操った芸、太鼓や笛やラッパに合わせて村の若者と娘が互いに踊ったりする催しだった。

 パルプリコはエヴィニー村の娘たちと踊る中、一人の娘と手を取った。真っ直ぐな亜麻色の髪に深緑の目、白い肌に祭りの日にはひときわ似合う陽光花の橙のドレスをまとった娘――、それがゼラフィーヌであった。

 ゼラフィーヌはパルプリコと踊った後は弟と妹らしき人物と一緒に祭り用の菓子パンの屋台の番を他の人と交代するために去っていった。美しいだけでなく、弟妹と共に祭りの番をする姿を見て、パルプリコはゼラフィーヌに恋をした。

 祭りが終わってからの平凡な日々に入ってから、パルプリコはゼラフィーヌを尋ねるようになった。ゼラフィーヌは両親や弟妹と一緒に畑の手入れや水汲み、糸紡ぎや機織り、森へ行って木の実や山菜採りをこなす善い娘だとわかり、パルプリコはゼラフィーヌが一人でいる時に話しかけたり、新しい服や靴を買う時の金貨を渡していた。

 ゼラフィーヌ初めて会った時は堅物そうだと思っていたパルプリコが自分と会う度に彼が結構清らかな青年だと知ると、彼となら夫婦としてやっていけそうだと思った。

 それからしてゼラフィーヌとパルプリコは一年半交際し、パルプリコはゼラフィーヌの両親に長女との結婚を申し込んだ。ゼラフィーヌの両親であるペトラスとグランナニエーラは自分の上の娘が村長の息子との結婚する約束を大いに喜んだ。そしてゼラフィーヌをパルプリコの両親に紹介すると、最初は小作農の娘と知ると顔をしかめていた両親だったが、ゼラフィーヌが糸紡ぎも畑仕事も得意だと知ると、結婚を許したのだった。

 二人は婚約し、年明けの冬には結婚式が行われる――筈だった。

 パルプリコはエヴィニー村の襲撃があった日、ラドヴィー村を離れて副都市キャロリーで六ヶ月間の期間とはいえキャロリーの法律学校に留学しており、エヴィニー村が宇宙盗賊によって荒廃し、村人も絶滅したことを知ると急いでエヴィニー村へ駆けつけ、馬車でキャロリー市からラドヴィー村に着くまでに五日もかかり、エヴィニー村へ駆けつけた時には家々は燃やされて消し炭となり、人々も石と土まんじゅうの墓によって葬られていた。ゼラフィーヌの家のあった場所へ行くと、石の墓標と家族が使っていたとおぼしき鋤や糸巻き棒などが添えられていた。

「……婚約者のゼラフィーヌ嬢が亡くなられてから、パルプリコ様は黒い服を着てずっとお部屋にこもりきりだ」

 屋敷の使用人やラドヴィー村の人々は婚約者とその一家、他の村人も喪って一日中部屋に閉じこもっているパルプリコの様子を見て囁き合った。

 法律学校の留学も中途放棄し、沈んでいるパルプリコを見て、人々はかわいそうだと心を傷めていた。


 処変わって宇宙――。光の粉のように赤や青や白などの星々が煌めく紫紺の空間に薄青い機体の中型宇宙艇、ウィッシューター号がカッパ星域の連合軍宇宙ステーションへと向かっていった。

 ウェルズ星大統領子息、ハミルトンの研修期間が一五〇時間を切ろうとしていたため、宇宙ステーションに向かっていたのである。

 ハミルトンはワンダリングスで研修を受けている間に使っていた部屋を整頓し、衣服や端末はトランクの中へ入れて、帰る準備をしていた。

「誘拐とか廃城探索での事件とかあったけれど……、それはそれで良き経験かな……」

 現場リポーターになるためとはいえ、父に頼んで連合軍とつながりのある流浪の兵団・ワンダリングスで研修をほんの一五〇時間とはいえ、ハミルトンが自身の過ごした部屋の様子を見て呟いた。

「失礼するぞ」

 ハミルトンの部屋にグランタス艦長が入ってくる。ハミルトンに貸した部屋が片付けられているのを目にして、グランタス艦長は部屋の整頓ぶりを見て頷く。

「もうそろそろ迎え先に着く頃ですぞ」

「はい。でもね、僕はワンダリングスで一五〇時間だけとはいえ、結構楽しかったんですよ。危険な目に遭ったけれど」

「ほぉ……」

 ハミルトンの意外な返事にグランタス艦長は首をかしげる。

「あと、リブサーナちゃんは僕とそんなに歳が変わらないのに、悪党退治や宇宙奴隷の救助や連合軍からの任務に励んでいるなんて、勇ましいなと思いました」

「リブサーナも結構不幸な目に遭っているからなぁ……。わしらがホジョ星に現れた宇宙盗賊がリブサーナの村を襲ってきて、リブサーナはその日に親兄弟も友人も知人も住む処も無くして、村から離れた荒れ地に倒れていた時にリブサーナをわしらが助けた。

 村が滅んだ後は、宇宙盗賊を追いかけてきたわしらが見つけて、頼る親戚や知り合いもなく、わしらワンダリングスに入ったんだ。

 最初の頃はホジョ星とは違った生活様式や武器の扱い方にも慣れなかったが、それでも武器の扱いも異星人との交流も良くなってきている。……ただ、リブサーナに望郷の念まであるかはどうかは知らぬ」

 グランタス艦長はハミルトンにリブサーナの過去を話し、ハミルトンはリブサーナの経緯を聞いて憐れんだ。


 それからしてウィッシューター号はリング状に造られたカッパ星域の連合軍宇宙ステーションに到着し、ハミルトンは交接チューブの連合軍ステーションの出入り口前で待機しているハワード中将たちによって出迎えられる。

「グランタス殿、ご苦労様でした。ハミルトン様が途中、誘拐されたり宇宙廃城の怪物に襲われたりのアクシデントもありましたが、無事に送ってくださり、ありがとうございます!」

 人間(ヒューマン)型や獣型、鳥型などのカッパ星域の青い軍服を着た連合軍兵がワンダリングスの面々に敬礼を取る。グランタス艦長たちもハワード中将たちに敬礼する。

「それでは……、また会いましょう。ありがとうございました」

 ハミルトンはグランタス艦長たちに深々とおじぎをし、ステーションの中に入っていった。

(ハミルトンさん、またどこかで会えるといいね……)

 リブサーナはハミルトンの姿が見えなくなっても見送っていた。

 そしてワンダリングスはまたしても、紫紺に色とりどりの星々が輝く海へ入り、宇宙をさすらう旅に出た。

 ウィッシューター号は後部から青い放物線を放ち、新しい任務が来るまでや休憩先の星が見つかるまで飛び続けていった。

 宇宙は限りなく広い。フリズグラン星での任務を終えたグランタス艦長は艦員たちに強大な敵の存在に気をつけるようにと忠告してから随分経つ。

 その"敵"はまだ姿を見せてはいないが、いつどこに出現するかわからない。

 しかし今はまだ留まっているようだが、いずれその幕開けは訪れるだろう――。


〈第四弾・完〉