6弾・1話 新しい艦員(クルー)



 故郷の星を出てからどれくらいの月日が経ったのだろうか。

 僕がいつも見る夢は同じ。高度な文明と幾多の金属ビルが並ぶ都。そこには僕と同じように一体で二つの姿を持つ機械生命体の住まう場所。

 僕の家族はどうしている? 仕事場のみんなはどうしている?

 僕は安全ながらもこの狭いカプセルの中にいる。外からでないと開かない。

 ここがどこでなんの星かわからない。ここから出て走り回りたいよ……。



 紫紺の地に金粉銀粉のような星々が散りばめられ、大小色の異なる惑星、白や灰色の岩石の衛生が浮かぶ宇宙空間――。その中に一機の中型宇宙艇が後部から青い放物線を放ちながら飛んでいた。宇宙艇は薄青い機体に魚のヒレを思わせる飛翼。その宇宙艇は宇宙空間にある宇宙製鉄所へと向かっていった。

「あーあ、あれから二〇時間か……」

 宇宙艇の一角にある艇員の個室で室内に設けられた机と前後に動かせる回転椅子に座る人間型異星人の少女がつぶやいた。小高い背丈に細身、黄色がかった肌に大きな深緑の眼、髪は肩まである当蜜色のハネのある髪で、白地に深緑のたっぷりしたチュニックに黒いインナーと深緑の半ズボン、足元は茶色い編み上げブーツ。机の上には桃色の万年筆と立方体インク容器と彼女の出身先の言語で書かれた文章の本。本には前の星を出てから何時間、何という惑星でこれこれと記されていることから日記である。

 日記は見開きの状態で左側にこの前の出来事が書き連ねており、右側は空白だった。最後に書かれている日記には『ブラドリー星、出発してから六時間。宇宙犯罪者の逮捕と"あのお方"の秘書と名乗るベラサピアに二度もやられた』と記されていた。

 その時、彼女のチュニックのポケットに入れてある携帯端末が鳴って、彼女はポケットから携帯端末を出して端末の画面の〈通信〉のアイコンを触る。携帯端末は掌大の長方形の機械で画面には〈通信〉や〈翻訳〉などのアイコンが並び、アイコンを指で触って操作する。

 アイコンの画面から立体的に彼女の上官であるグランタス艦長の姿が映し出される。頭部に黄褐色の複眼と触角と双眸を持ち、背には黒い前翅と黒透明の下翅、両肩に「<」状の突起を持ち、灰色の軍用ガウンをまとった老兵、インデス星の元王族である。

『ワンダリングス全員に告ぐ。オミクロン星域宇宙製鉄所に向かう途中の惑星で知的生命体反応をキャッチした。至急、司令室に集合』

 そこで通信が切れ、少女は椅子から立ち上がり、壁に備え付けのクローゼットとカウンターと机の真上のベッドと各惑星で撮影した珍しい木や花の写真を壁に貼り、ワンダリングスに入ってから少しずつ買った万年筆や日記帳、服や靴、そしてラムダ星域の主要文字で書かれた物語の本が数冊、風景写真と動物図鑑や植物図鑑がある自分の部屋を出て、左右に開く扉をくぐり他の部屋と同じく天井と上壁が象牙色(アイボリー)、下壁と床が暗銅色(ダークブロンズ)の廊下に踏み入る。


 司令室は宇宙艇の前部にあり、下段にコックピット窓と四つの操縦席とコンソール、上段に司令席と盤状モニターとコンソールが設置されている。司令席にはグランタス艦長が座り、司令席の近くには少女以外の四人の艇員(クルー)が集まっていた。

 赤褐色の体に長い触角と赤と黒の三白眼とくすんだ緑の軍服と背に赤い斑紋の上翅と薄い下翅の筋肉質の虫型異星人(エイリアン)のドリッド、銀髪青眼の有機合成人間(レプリカント)のブリック、紺青の長髪に銀色の触角と翅を持つ人間型異星人の女アジェンナ、長耳に細長の翅を持つ若葉色の巻き毛の幼女ピリンである。

「リブサーナです、入ります」

 少女はグランタスはグランタス艦長に敬礼しながら挨拶する。グランタス艦長は艇員(クルー)が全員集まると、司令席から立ち上がって盤状モニターのコンソールを操作して盤状モニターから立体的に宇宙座標が表示される。宇宙座標Ο(オミクロン)―九九九に生命体の存在を示す赤い点が光っていた。

「Ο―九九九ってその星域の終わり、って現してんでしょ? 宇宙座標の九五〇以降って、大概は知的生命体のいない星で、生体反応って……」

 アジェンナが呟く。

「うむ。連合軍からの命令でもなく、我々が自ら入ることだからなぁ……。宇宙漂流者ってこともあるし……」

 グランタス艦長は艇員がに伝える。宇宙漂流者というのは宇宙艇の燃料切れや隕石や衛星との衝突などで自分の星に帰れなくなった者を指す。宇宙漂流者は落下先の惑星や衛星での環境に耐え切れずもしくは植物や小さな動物といった有機生命体を捕食できずに餓死あるいはあっても毒性のある動植物を食べて死ぬ者が多く、生存者の確率は低かった。

 リブサーナはそれを聞いて、ブラドリー星でベラサピアに壊された自分の鎧と武器を修理してもらおうと宇宙製鉄所に向かっていくところ、オミクロン星域の辺境にある惑星にある知的生命体の探索の方が大事と知ると、賛成した。

「そうだよね、今のうちに助けておかないと後悔するもんね」

「よし、ではΟ―九九九へ向かうぞ」

 グランタス艦長の指揮によって艇員たちは操縦席に座り、進路先をΟ―九九九に設定して操縦桿を握る。

「燃料チェックよし、エンジン異常なし。システムオールグリーン。進路、Ο―九九九へ!」

 高知能高知識の持ち主であるブリックが宇宙艇の点検を告げるとグランタス艦長が指示を出す。

「ウィッシューター号、全速前進!!」

 ウィッシューター号はΟ―九九九へと出力を上げて前進する。


 ウィッシューター号は九時間後に生体反応を伝えていたオミクロン星域の辺境――Ο―九九九に着き、ウィッシューター号は大気圏をくぐり抜けて地上一〇〇〇メートル台に来ると、生体反応のある地域を検索する。

 Ο―九九九は清浄な空気と澄みきった水、草木豊かな自然惑星で、そこには鳥も獣も虫も爬虫類も両生類も多数いて、着陸先には水辺は見かけなかったが魚もいて、知的生命体――人間型生命体はいなかった。

 生体反応のある処は一番大きな大陸の針葉樹地帯で、北と西は木々が生え、東と南は草原という地域だった。ワンダリングスは草原地帯にウィッシューター号を着陸させて降りる。

 踏み入れた惑星は寒くも暑くもなく、暖かく透明に近い青空と白い雲がいくつも浮かび、白く輝く太陽が真上に昇っていた。空には小型の鳥たちが群れを作り、耳と尾の長い茶色や灰色の毛の四足獣がウィッシューター号を見て逃げ出し、草原には白や黄色の鈴のような花がポツポツと咲いていた。

「は〜、何て清々しい空気なの!」

 リブサーナは降り立った星の大気を吸って述べる。ワンダリングスの艇員たちは念のための携帯銃(ハンドライフル)と携帯食料や救急キット入りのポーチをベルトに付けて巻き、森の中にある生体反応を探しに行くことにした。森の中は猛獣などの危険性もあるため、二人人組で行動することにした。グランタスとピリン、ブリックとアジェンナ、ドリッドとリブサーナのペアである。

「わしとピリンは西、ブリックとアジェンナは東、リブサーナとドリッドは北を調べに行く。何かあったら連絡するように」

「了解!」

 ワンダリングスは三組三手に分かれ、森の中に入る。


 降り立った星の森の木は針や鉄条網のような葉が多く、木の枝には青や橙の羽毛の鳥が泊まってさえずり、木の根元には生えている草花は花弁の数も色も様々で、丸い翅を持つ蝶のような虫や細長い翅のハチに似た虫が花蜜を吸っていた。乾いた薄茶色の土はさらついており、毛の長いネズミや白と黒の縞模様のリスが駆け回っていたり木の幹によじ登っていたり、木によって形や色や固さの異なる木の実をかじっていた。

 グランタス艦長とピリンは森を歩くが生体反応を示す知的生命体の姿は見当たらなかった。途中ピリンはケナガネズミに木の枝を当てたりもしていた。

 ブリックとアジェンナも森の中を散策したが手がかりはなかった。

 リブサーナとドリッドは小鳥のさえずりや虫の翅のさざめく音の森を目にし、強く大きい生き物が弱く小さい生き物を喰らう弱肉強食以外は本当に自然が豊かで異星人がここに住んでもおかしくないような環境だと感じていた。

「本当に知的生命体なんているのかよ。鳥や動物や虫、木や花しか見当たんねーぜ」

 ドリッドがもう数時間も経つのに知的生命体の反応があっても本人がいないことに零していた。

「まぁまぁ、まだ空も暮れてなさそうだし、今日のうちに探せば見つかると思うよ。だけど……」

「だけど……何だ?」

 リブサーナが言葉を区切ったのでドリッドが尋ねてくる。

「もし生きているのならさ、その人はずっとこの星ですごしていったことになるんだよね。食べ物は森の木の実や花蜜、キノコや鳥の卵だってあるし……。衣服も木や葉の繊維で作ればなんとかなるし。住む所も木のうろや木の上、洞窟があれば風雨を凌げられるけど、その人には同族がいなくって寂しがっているんだろうなー……って」

「確かにな。この星には人間(型の生物がいない。動物は喋らないし鳥や虫の言葉も異なる。まぁ常人だったらこんな場所にいたらおかしくなっちまいそうな感じだもんなぁ」

 ドリッドが言うと、リブサーナは一休みするために近くの石に腰を掛ける。すると石がぐらついて、リブサーナは思わず広報に転びそうになった。

「きゃっ!」

「危ねぇ!」

 ドリッドが間一髪でリブサーナの腕を掴み、リブサーナは後ろが斜面になっているそこに転がらずに済んだ。

「あ、ありが……」

 リブサーナがドリッドに礼を言うと、自分の後ろの斜面の下に一つの楕円形の機械を見つける。走行は黒と銀色で小さな窓が一つあるが中に誰がもしくは何が入っているのかわからない。

「もしかしてこれって……」

 リブサーナが機械を見つけて呟く。

「そうか、生体反応ってこの中に入っている者からだったんだな」

 そう感じたドリッドは懐から携帯端末を取り出して、グランタス艦長たちに生体反応先のの発見メールと現在地のデータを送る。

 しばらくして別行動を取っていたグランタス艦長たちがリブサーナとドリッドのいる所に駆けつけてくる。

「おぉ〜い、サァナ〜!」

 ピリンがグランタス艦長と共に現れる。

「あー、いたいた」

 アジェンナがブリックと共にやって来る。

「これか。生体反応を出しているという機械というのは」

 グランタス艦長は生体反応のある機械を見て呟く。

「どうやら宇宙艇の中にある脱出ポッドのようですね。結構な大きさのようで……」

 ブリックが脱出ポッドを見て呟く。脱出ポッドは縦が七メートルほど、横が五メートルほどはある大型で、大きめの異星人用だと考える。

「この脱出ポッド、外から操作しないと開かない仕組みだな。中に入っている者を出しておかないとな」

 そう言ってブリックは斜面を下って脱出ポッドの近くに立つ。そしてポッドの解除方法を探していると、いくつかのボタンとスイッチと電子表示版が付いていた。

「ふーむ、やってみますか」

 ブリックはボタンを入力して、ポッドの解除を始める。電子表示版には見たこともない文字が浮かび上がり、それがエラーだとわかるとブリックは解除暗号を入力して試す。電子表示版が赤から青に変わると、ガコンと音が鳴り、ポッドの蓋が真上の方に開いて中から冷気のような白い気体が出てくる。

「な……なかにだれがはいってんだぉ!?」

 ピリンが気体の出現とポッドの解除に驚くもワクワクする。

「こ、これは……!」

 ブリックがポッドの中に入っていた者を見て呟く。リブサーナもドリッドもアジェンナもグランタス艦長もポッドの中の者を見て目を丸くする。

 中には一体のロボットが入っていたのだ。それも単純な形の警備ロボや作業ロボではなく、人間型異星人(ヒューマンがたエイリアン)と同じく手足があって両眼も鼻も口もあるロボットだった。頭部と腕脚と胴体が赤く、顔と二の腕と大腿が白いロボットで両眼はシャッターのような瞼で閉ざされており、額にはゴーグルが付いている。

「な、何で……!?」

 リブサーナが思わずもらすと、ロボットの手の指がピクリと動き、シャッターのような瞼が開いて更に上半身をむくりと起こす。

「う、うごいたぁ!!」

 ピリンがロボットの起動を見て叫ぶ。

「もしかして脱出ポッドの落下時の影響で、体内の緊急休眠システムが作動したのだろうな。しかし生体反応はここからなのに……」

 ブリックがロボットの起動と眠っていた原因を述べていると、ロボットが突然喋りだした。中音の男の声である。

「ここは……、どこ、だ……?」

 更にロボットは首を動かしてブリック、そしてブリックの後ろにいる面々を目にして尋ねてくる。

「君たち……は誰だ……? この星の住民、か……?」

 ロボットが尋ねてきたのでブリックや他の面々はためらう。

「うーむ、何と言えばよいか……。私はブリック。人造人間レプリカントで、この星に生体反応があると気づいてこの星に降り立った。

 君はロボットだから生体反応なんて持ってないのに、この場所に我々以外の知的生命体の生体反応を発しているようだが知らないか?」

 ブリックがロボットにわかりやすいように説明すると、ロボットは「知的生命体の反応」と聞いて呟く。

「生体反応? 僕の中の生命核(ライフコア)がどうしたって?」

 ロボットが『生命核』という言葉を発してきたので、ブリックはどういうことかと首をかしげる。

「生命核……。ロボットは元になった人物あるいは創物主がプログラミングした電子頭脳で動いたり考えたりするのに、君は一体……」

 ブリックが考えていると他の面々も斜面を滑走してきてロボットを真近で見てみる。

「人間型異星人と似たような構造ってのはお前もしかして戦闘型か? いかにもそんな気がするぜ」

 ドリッドがロボットを見て戦場や格闘場で活躍する戦闘型ロボなのでないのかと尋ねてくる。

「戦場? 格闘? 僕そんなのやったことない」

 ロボットはドリッドの問いに否定する。

「何、戦闘型じゃないのか? じゃあお前、何の仕事をしてたんだよ?」

 ドリッドはロボットにまた質問してきたのでロボットは無人の自然惑星に落下する前の自分の役割を思い出す。

「僕は故郷の星を離れて一人で宇宙船に乗っていた……。僕たち機械生命体の生活資源のありそうな星の調査に行くために……」

「機械生命体、ロボットじゃなくって?」

 リブサーナがロボットもとい機械生命体の生い立ちを耳にする。

「僕の名前はヒートリーグ。シグマ星域にあるメタリウム星のスティーリアという都の生まれ。そこは機械生命体テクノイドの世界。

 僕は宇宙を飛んでいたら燃料が全部なくなってこのままだと衛生群と衝突すると危険が出て脱出ポッドに乗って宇宙船から脱出した。

 脱出ポッドの救命睡眠装置が作動して、僕はこの中に入っていた。五〇年も」

「ごっ、五〇年!?」

 リブサーナたちがヒートリーグが五〇年間も無人惑星に眠っていたことを聞くと仰天する。

「けっこーなおじーちゃんだぉ……」

 ピリンも外見は五、六歳の幼女なのだが長命種族のため三二歳で、自分よりも齢が上だと聞いて固まる。

「うん。でも、五〇年はテクノイドにしては短い方だから。僕の故郷には何万年も生きているテクノイドもいるんだから」

 ヒートリーグが機械生命体の長寿をピリンたちに教える。

「兎に角、この星の知的生命体反応がお前さんだということはよくわかった。わしは宇宙兵団ワンダリングス艦長、グランタス=ド=インデスだ。よろしく」

 グランタス艦長がヒートリーグにあいさつをしてきたので、他の艇員(クルー)たちもヒートリーグにあいさつをする。

「俺は艦長補佐のドリッド」

「私はアジェンナ」

「ピリンだぉ」

「わたしはリブサーナ」

 ワンダリングスはヒートリーグに自己紹介を述べると、グランタス艦長はヒートリーグに尋ねてくる。

「それでお前さん。これからどうする?」

 ヒートリーグは今の状況を目にしてから考える。宇宙船はなく脱出ポッドも五〇年の間にエンジンやらが錆びており、自然惑星のここにはテクノイドに相応しいエネルギー資源もなさそうだった。

「メタリウム星へ帰りたい」

「そうか。もし良かったら我々の宇宙艇に乗せてやろう。みんな、いいか?」

 グランタス艦長はワンダリングスの艇員(クルー)にヒートリーグの搭乗権を尋ねてくる。誰も反対してこなかったので、ヒートリーグはワンダリングスの宇宙艇、ウィッシューター号に乗ることになったのだった。


 ヒートリーグは脱出ポッドから出ると、二メートルは超えていそうな身体を起こして立ち上がる。歩くたびにガシンガシンと足音が鳴った。

 ウィッシューター合に乗り込んだヒートリーグは宇宙艇内の設備を見て呟く。

「ふーん、有機生命体の機械技術って結構古風なんだー……。テクノイドの宇宙艇技術は設備がたくさんあるからなぁ」

「ウィッシューター号はグランタス艦長が自分の故郷を出てからずっと乗ってっからな。相当な年季が入ってんだよ」

 ドリッドはウィッシューター号の年季を教えるとヒートリーグは「ふーん」と呟く。

「ウィッシューター号の燃料は三元素化合気体(トライエレメント)。燃料は主に宇宙市場(コスモマーケット)で購入するが星域によって異なる。他にも戦闘訓練室や射撃訓練室、台所やトイレや洗面所や風呂場、食糧庫や装備保管室もある。あとブリックは科学担当だから研究室も持っている。後はエンジン室や小型宇宙艇の格納庫、個人の私室だ」

「三元素化合気体がウィッシューター号の燃料……。メタリウム星ではそんなに長くもたないから室内電力のエネルギーにしているな」

「まぁ、この星の知的生命体反応がお前だったのなら、もう出発して宇宙空間の安定したところでじっくりと教えてやるからな」

 ドリッドはヒートリーグに言うと、アジェンナとブリックとリブサーナは操縦席に着き、グランタス艦長は司令席、ピリンは司令石と同じ段にある補助席に座る。そしてヒートリーグは大きすぎるため操縦席の真後ろのスペースにしゃがんで座る。

 ウィッシューター号はエンジンを起動させて自然惑星を離脱し、宇宙空間の中に入っていき、ウィッシューター号は後部から青白い放物線を放っていく。

 ウィッシューター号が宇宙の安全区域にある衛星群も小惑星もない場所に入ると、ドリッドとリブサーナはヒートリーグにウィッシューター号の中を案内する。

 射撃訓練室に入ると、何もない空間に立体映像を作動させて、凶悪な異星人(エイリアン)の的が出てきてドリッドは手本として携帯銃(ハンドライフル)を出し、引き金を引いて銃口からエネルギーの弾丸を撃ち放って的異星人(エイリアン)を次々に撃ち倒して消滅させていく。制限時間内に倒したところで、今回の結果が映し出されて、インデス語で『ドリッド・五〇体中四五体・九〇点』と表示される。

「わーっ、すごーい!」

 ヒートリーグはドリッドの腕を見てはしゃぐ。

「ドリッドはワンダリングスに入る前は優れた軍人だったからねぇ」

 リブサーナがヒートリーグにドリッドの経歴を話す。

「ねぇ、僕もやっていい?」

 ヒートリーグがドリッドに聞いてくる。

「お、おう。だけどお前、戦い慣れしてなそうだから、初級レベルにセットしておくな」

 ドリッドは射撃の訓練プログラムを入力するパネルを初級レベルに設定して、宇宙の衛星上だった立体映像は大きな葉や太い蔓などがある密林に変わる。すると木の後ろや草の茂みから牙や角や爪のある宇宙各所の猛獣たちが現れて、ヒートリーグに近づいてくる。

「あ、そうだ。銃を」

 リブサーナがヒートリーグに携帯銃を渡そうとした時、ヒートリーグは受け取らなかった。

「僕にはコレがあるから」

 そう言ってヒートリーグの左腕から銃口が出て、エネルギーの散弾を撃ち放つ。赤いエネルギー弾は赤で、的となる立体映像の猛獣が次々と倒されて消滅する。制限時間からわずか一二秒で二〇体の的を全部倒してしまったのだ。

「すごい……。わたしなんてワンダリングスに入った頃は二〇体のうちの四体しか倒せなかったのに……」

 リブサーナはヒートリーグの性能を見て目を丸くする。

「ふーむ。てっきりただの調査係だと思って戦闘は関係なさそうだと思っていたら、戦闘センスはあるな。

 よしっ、俺がこれから戦闘の基礎を教えてやるよ!」

 ドリッドはヒートリーグに戦士としての素質があると知ると、胸を張って彼を教育しようと考えた。

 ワンダリングスに新しいメンバー、メタリウム星のテクノイドであるヒートリーグが加わった。