エルニオたちは超変化を遂げて戦って疲れたジュナを連れてエリヌセウス上級学院の真北にある雑林地区に身を潜めた。 夜とはいえ木の葉がほとんど散った木の枝は不気味だし、冬近くの夜のため凍え、それでも一同は枯葉を集めて木の枝を摩擦熱で火を起こして凌いだのだった。ジュナは近くの木のウロの中に寝かされ更に枯葉を布団にしてかけた。 四組とも自分の家族が眠っている間に家を抜け出したので今更家に帰っても親兄弟が尋ねてくるに違いないと思って帰れずにいた。 「うう、寒い……」 えりのないベルトコートにストールを頭と首に覆って手袋をはめている羅夢が震える。 「警察は必ず学校に問いただしてくるだろう。そして僕たちにダンケルカイザラントのことを尋ねてくるに決まっている。僕たちだけでなく、家族にまで迷惑がかかる……」 エルニオはあの後の学校で起こることを想定して唇を噛み締める。 「本当にどうしたらいいんだろう……」 年長者であるトリスティスも頭を悩ませた。 その時、四体の融合獣が自分たち以外の気配を感じとり、エルニオたちも顔を上げる。 すると一本の木の後ろから体の色が象牙色でたてがみと背中の翼の色が渋緑で額の一本角はプラチナのように輝き、眼の色と両翼についた契合石は夜空のような紺色の融合闘士(フューザーソルジャー)が現れたのだ。 「あ、あんたは……まだダンケルカイザラントからの刺客がいたっていうの!?」 トリスティスが融合闘士を見て目を丸くするも尋ねてくる。 「僕がダンケルカイザラントの刺客だって? 何を言っている。ダンケルカイザラントは僕の敵だ」 融合闘士は冷静ながらも小高い男声を出してエルニオたちに言った。声の感じからして結構若いらしい。そしてむき出しの口は肌の色からして白く寒方人種(ブレザロイド)か最多人種(ノルマロイド)のようだった。そして話す言葉は訛りも高低もないエリヌセウスの共用語アリゼウム語であった。 すると融合闘士はエルニオたちに尋ねてくる。 「話がある。僕はダンケルカイザラントの行き方を知っている。何年もかけて本拠点の出入り口を見つけたんでね」 それを聞いてエルニオたちは眉をひそめる。誰もが知ることのなかったダンケルカイザラントの本拠点の行き方を! 「それ言うと、ますます怪しいです。嘘をついているように思えます」 羅夢が疑って言うと、融合闘士は話を続ける。 「まぁ、落ち着いて。僕だって一〇年近く前に家族と離れ離れになり一人になった僕は自分の敵国に捕まって奴隷にされ、ダンケルカイザラントの臨時基地に連れて行かれて幼かったけれど勘の鋭い僕はここがヤバイ場所だと悟って逃げ出したんだ。そのうえ僕は奴隷にされていた時の拷問で記憶喪失になり、ようやく三年前に臨時基地を逃げ出して戻ったという訳。 そして今僕と融合しているペガシオルと一緒に融合獣に関する情報やダンケルカイザラントの秘策を探っていたのさ」 融合闘士は自分の生い立ちをエルニオたちに話した。この融合闘士が嘘をついている訳でもなさそうに思うようになった。 「それでダンケルカイザラントの本拠地へ行って何をするんだ?」 ラグドラグが融合闘士に尋ねてくる。 「決まっているだろう、潰すのさ。君たちのいない所でダンケルカイザラントは身寄りのない人々を集めて、兵器となる金属や機械データを集め、いずれは世界中に戦争を仕掛けてくるだろう。 アルイヴィーナ星を融合獣と融合闘士が支配する世界に変えるためにね」 「そんな……」 トリスティスは融合闘士の話を聞いて後は何も言えなくなる。その時、木のウロからジュナが出てきて布団代わりの枯葉を払いながら融合闘士に尋ねてくる。 「それ……、本当ですか……!?」 「ジュナ、もう起きていいのか?」 ラグドラグがジュナに駆け寄る。 「君がジュナ=メイヨーだね。僕は君と同じダンケルカイザラントを敵として見ている者だ。何度もダンケルカイザラントの融合闘士を相手にしてきた」 融合闘士はジュナに言う。 「みんな行こう。ダンケルカイザラントの本拠地へ……。今は学校にも行けないし家にも帰りづらい時、ダンケルカイザラントの人たちと話し合って警察に自首してもらって、マスコミの人たちが世界中に真実を伝えてもらえば、みんな誤解を解いてくれるよ。 戦うんじゃなく、話あって」 「確かにそのやり方は穏やかですけど……、あの人たちに話し合いは無理なんじゃあ……」 羅夢がジュナの考えを聞いて苦い顔をする。 「話し合いが無理なら戦うしかないよ……」 ジュナは言った。やがてエルニオも羅夢もトリスティスもそしてラグドラグたち融合獣もダンケルの本拠地へ行くことに賛成した。 「それじゃあ行こう。僕が案内するよ」 ジュナたち四組の適応者と融合獣は有翼一角の融合闘士と共にダンケルカイザラントの本拠地に向かい、降伏を世間に勧めるために、それがダメなら戦うために旅立ったっていったのだった。 〈第五弾・完〉 |
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