ジュナが父の供養期間を終え、宿泊先の母の実家で見つけた石板を見に、エルニオ、トリスティス、羅夢、彼らの融合獣がジュナが帰って来てからの十数日後、ジュナの家に集まった。ジュナの父の供養期間が終わった後に学校では秋学期の中間考査のため、四組で合流したのは随分と久しぶりだった。 「これがジュナのお母さんの実家の地下鉱路で見つかったという石板か……」 エルニオが見たこともない記号が刻まれた石板を見て呟く。 「本当に見たこともない文体ですよね。アルイヴィーナですら古代文字なんて十数種類あるのに、どれも当てはまりませんね」 羅夢が文字を見つめて言う。 「うん、電子事典でも似たような文字や言語を当てて調べてみたけれど、ようやくわかったのが、人の形をしたのと鳥や獣や魚や虫みたいなぐらいなんだよね。後はもうさっぱり……」 ジュナも試験勉強の合間にコンピューターの電子情報網の古代文字のカテゴリーを見て調べてみたが解読できたのはほんのわずかであった。 「本当にこれ、アルイヴィーナの文字かも怪しいもんだわ。きっと他の宇宙人が何百年も前に残していった物なんじゃあないの?」 トリスティスが石板をじっと見つめて言った。 「そういえばジュナさん、ジュナさんがお母さんの実家で泊っていった時にダンケルカイザラントの刺客が出てきて大惨事になったんですよね、エルサワ諸島って。どうなったんですか?」 羅夢がそのことをジュナに尋ねると、ジュナは思い出して答えた。 「ああ、あそこね……。伯母さんやおじいちゃんやおばあちゃん、崩れた鉱路跡を建設企画が中止になっていたエルサワ歴史博にすると開発を始めて、翌年の春には完成させて開く、って言ってたよ……」 ジュナは親族に島の一部を壊してしまったことに怒られると思いきや、それどころか費用も人件費もかけずに鉱路跡を大きな敷地にしてくれたことに感謝されて少し複雑だった。 「ああ、そうなんだ……」 一同がその話を聞いて、少し吹き出した。 「そうだ、みんなにこの石板の写しをあげるから、もし何かわかったら教えてほしいな」 ジュナはただの白紙に石板の文字を肉筆で書き写した文書をエルニオたちに渡した。 それからしてエルニオたちは各々の家に帰っていき、部屋に残ったジュナとラグドラグはエルニオたちに差し出したお菓子の皿やドリンクのコップを片付け、石板を見つめ直した。 「これが融合獣強化の秘伝ならば、ダンケルカイザラントの奴らに渡さないようにしなくっちゃな……」 「うん、絶対に渡さないよ。ダンケルカイザラントもどうして融合獣の強化やアルイヴィーナの征服にこだわっているのか知らないけれど……。絶対に止めなきゃ、あの人たちの野望を」 そしてジュナは自身の右手首にはめられた金の幅太の腕輪を見つめる。腕輪には竜と天馬の紋様が刻まれ、赤い宝玉ガーネットがはめ込まれていた。 (わたしはお兄ちゃんと絶対に会う。そして、ママとわたしたちで一緒に暮らすんだ。その日が来るまで、わたしはみんなとダンケルカイザラントと……) そう思ってジュナは左手で腕輪をつかんだ。 幼い時に行方不明になった兄、レシルの温もりがあるような気がして。 ジュナは石板を花柄の大判ハンカチに包んで、ベッドの下に隠した。この石板はジュナたちの秘密の中の秘密なのだ。 ジュナとラグドラグとその仲間たちの活躍はいずれまた――。 〈第四弾・完〉 |
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