2弾・2話 アクサレス公国


 次の日、ジュナは学校の学生食堂で、エルニオとトリスティスに自分にやっぱり兄がいたことを話した。

 学生食堂は二〇〇人が入れる教室一個半ほどの広さの場所で、ベージュの壁と灰色の軟質ラバーの床の厨房と食事処に分かれている。丸テーブルに椅子が四脚一組になっていて、五〇組ある。食事は自販機で食券を買い、それを渡し口の読み取り機に入れて番号札を受け取り、受け取り口スクリーンに番号が出ると、注文のメニューが出てくるという仕組みである。

 他の生徒達が食事している中、ジュナたちは片隅のテーブルで話し合っていた。

「いたんだな、兄貴が……」

 夕べ送られてきたジュナの携帯メールを見て、エルニオが呟いた。エルニオのメニューは蟹(ケレーヴェ)のクリーム入りカラケッタ(コロッケ)の定食。

「うん……。八年間の間に一人っ子と思うようになって……。その間にお兄ちゃんのことも忘れて……」

 ジュナは銀色の角盆の上のひき肉とテトマの包み麺定食をフォークでつつきながら答える。

「それで、お母さんにはなんて訊いたの?」

 トリスティスが白身魚の香草焼き定食を食べながらジュナに訊ねる。

「ママは……、悲しみを与えないようにと、お兄ちゃんのことを隠していて、八年もわたしに言わないで、隠していたのを……凄く悪く感じてて……」

 ジュナは昨日の出来事を二人に話していくうちに、自身も悲しくなって泣きだした。大声で泣かなかったものの、母親の気持ちを理解してやれなかった自身を悔んでいた。母親や亡き父の隠し事には怨んでいない。他者の悩みや苦しみを幼い時からわかってやれない自身を責めていた。すすり泣くジュナを見て、エルニオとトリスティスはうろたえる。

「泣かないでよ、そんなに……。それで、お兄さんの手掛かりとかは?」

「手掛かり……?」

「そうだよ、持ち物とか写真とか。それでジュナの兄貴のこと、わかるんじゃないか?」

「……?」

 ジュナはエルニオの言っていることがわからなかった。疑問に思っているジュナの顔を見て、エルニオは金髪を掻く。

「僕たちでジュナの兄貴を探すってことだよ。どこにいて、何をしているのかを、な」

「探す……って、どうやって?」

 トリスティスが訊ねると、エルニオは咳ばらいをして、答える。

「あー、ゴホン。僕のおばあちゃん……、カテリーナ・バディスっていう乗り物を造ったりする機動学者なんだけど……」

「カテリーナ・バディス博士ね。確か、無公害エンジンなどの開発で、何かの科学賞を獲った……」

 トリスティスが口を割ってきたので、エルニオは「うん」と答える。

「僕のおばあちゃんが造った小型空船(くうせん)で……というかおばあちゃんが造ったんだけど、使わなくなった小型空船でジュナの兄貴を探しに行くって寸法だよ。僕が今年の誕生日にもらって、僕が使えるように修理したんだ」

「何気に凄いな……」

 トリスティスが呆れたように褒める。機動学者カテリーナの血を継いでいるからか、エルニオは機工学やメカニックに強い。それもごく最近ではなく、七歳から始めているというのだから。

「でも学校とかは……」

 ジュナが不安げに言うと、エルニオはテーブルを叩いて言う。

「いーのっ! 学校のない休日や長期休暇に行けばいいんだから! それでいいだろ?」

「あっ、そうすればいいんだった……。それより良かった。これでお兄ちゃんを探しに行けるんだ……」

 ジュナは安心した。これで長いこと離れていた兄を捜しに行けるのだから。

「そんじゃ、羅夢ちゃんにも教えておかないとね」

「ああ、そうだったな。メール、メール」

 トリスティスとエルニオが携帯電話を出す。


  その翌々日の学校休みの木曜日、ジュナ&ラグドラグ、トリスティス&ソーダーズ、羅夢&ジュビルムは朝早くに起き、レメダン地区にあるエルニオの家にやってきた。三組とも大型輸送(カーガー)車で。

 エルニオの家――軽くて一〇〇全辺(四〇〇坪)はありそうな敷地に白いドーム型の機動研究所と小型空船があると思われる巨大な長方形の丸屋根のガレージ、そしてその奥に住居と思われる十三全辺(五十二坪)の赤い屋根に白い壁の屋敷。三角屋根に細やかな造りの柱とベランダ。敷地の四方は歩道で区切られており、近所はジュナの住む地域と同じ造りの住宅街である。

 ジュナも羅夢もトリスティスも、ラグドラグもジュビルムもソーダーズも、エルニオの家の広さにポカンとしている。

「学校並みの広さだわ……」

 今日のトリスティスの服装は、青いキャミソールチュニックと白いアンダーシャツ、オールドブルーのサブリナパンツ、素足に青いサブリナシューズ。隣ではソーダーズが尻尾で立ちながら、見上げている。シャープなフォルムと鋭いヒレと針のような上あご、目は琥珀色、尻尾の付け根に琥珀の契合石、トリスティスの相方ソーダーズ。

「普通の住居、八棟が建ちやすね……」

 更にその反対側に羅夢がジュビルムを抱いている。

「うちより凄いです……」

 今日の羅夢の服装は桃色の羽織に、白い和衣、藤紫のキュロット、足は足首を覆う外足袋である。そして二人の少女の間にジュナとラグドラグ。

「お前んちより広ぇ……」

「あはは……」

 ジュナは腑抜け笑いする。ジュナの服装は襟と袖と腕カバーが茶色の黄色いジャケットと薄オレンジのタイトワンピース、そして靴は黄色いブーツカバーといつもの茶色いブーツである。

「みんなーっ、よく来たねー」

 屋敷からエルニオと緑鳥の融合獣、ツァリーナが出てきた。ツァリーナは緑色の羽毛と翼と尾羽は金色、瞳はセレスタイト、喉にセレスタイトの契合石がついている。

 エルニオは普段のフォーマルカジュアルとは違い、緑色の半ズボンのサロペットと黒いTシャツ、両手に黒い指抜きの作業グローブ、そして黒い脱着が楽なブーツという工業員のような格好である。

「エルニオ……」

 ジュナはエルニオを見て呟く。エルニオは女子や他の融合獣がフォーマルカジュアル服以外のエルニオの姿を珍しそうに見ており、エルニオはむっつりする。

「何だよ。この格好じゃないと、空船のメンテできないんだよ」

「あ、そっか……」

 みんなは納得する。

「さあさあ、今日のうちに出かけましょう。早くしないとお昼になっちゃうわよ」

 ツァリーナが両手を叩いて、みんなに言う。

「そんじゃ、ガレージに入って。空船に乗ろう」

 エルニオに言われて、一同はガレージの人間用出入り口の中に入る。エルニオがガレージのキーロックを解除し、ドアが左右に開く。

「うわあ……!!」

 ジュナたちはガレージの中を見て驚く。ガレージ内には鉄骨でぶら下がっているいくつも野の照明。鈍色の天井と壁。壁の端っこには空船をメンテするための道具や油など。そして一行を驚かせたのが小型空船である。

 小型空船は先端がシャープフォルムで後部は台形を半分にしたような形で、真上から見ると、二等辺三角形の縦長である。両翼は燕(ツバクロ)のようで、後部エンジンは三穴。ボディカラーは空の碧に合う生成り色で、船底と船上尾(トップフィン)が臙脂色。そしてボディに「アウローラ」という文字が書かれている。

「凄い……!」

「これで行くんだ」

「エルニオさん、流石です……!」

 ジュナ、トリスティス、羅夢が褒める。

「僕が一から造った訳じゃない。造りかけを完成させたんだ」

 エルニオが少しえばって言う。

「ツァリーナも手伝ったのか?」

 ラグドラグツァリーナに訊くと、彼女は「いや」と答える。

「あの子が長い期間をかけて、ここまで来させたのよ。エルニオは機工学は優秀でも社会や語学は……」

「ツァリーナ、余計なことは言わないの」

 エルニオがスパナを投げつけるポーズを見て、ツァリーナは口(嘴)をつぐんだ。

「それじゃあ……搭乗するよ!!」

 ジュナが叫ぶとみんなはおーっ、と合意。エルニオがリモコンを出し、アウローラ号の搭乗ハッチを開いた。アウローラ号の船体の中心部にあるハッチがバクッと上に開き、これまた中も凄かった。

 アウローラ号は前部はコクピット、操縦席三席、後部座席六席、他にトイレと仮眠所には二段ベッド、そして食べ物も積んである。中は灰色で座席は全て天然素材の座り心地の良いものでシートベルトも付いている。

 操縦席はエンジンレバーと両手で持つ操縦かん、酸素やエンジンや高度計などのメーターも備え付けられている。

「あの、エルニオ……。わたしや羅夢やトリスティス先輩、操縦できないんだけど」

 ジュナが不安そうに言うと、エルニオはニッと笑う。

「心配すんなよ。僕が最初のうちに操縦する。その後は少しずつ覚えていけばいいさ。早く座って。出発するよ」

 ジュナはコクピットの左、真ん中にエルニオ、右にツァリーナ、ラグドラグ達は後部座席に座り、シートベルトを締める。

「そんじゃ、行くぞ。アウローラ号、発進!!」

 エルニオがレバーを引き、操縦かんを握った。すると船底エンジンが発射され、アウローラ号は上昇し、照明が綺麗に折りたたまれ、ガレージの屋根がスライドオープン。そして、外に出ると後部エンジンを噴出させた。

「目標、アクセレス!!」

 アウローラ号はアクセレスの方向へ向けて、出発。

 アウローラ号は勢いをつけて発進された。



 アウローラ号は小型空船といえど、気流に乗っかって真っ直ぐ北へと進み、碧空に白い木竜線を描いていく。窓の下は森と草地とその中に建てられた家々や公園などの施設が見える。その中に紺色の線、北隣国リトリースに続くピーメン川が見える。あの川の地下水路でラグドラグと出会ったのをジュナは思い出した。そのピーメン川を辿るように、エリヌセウス皇国の国境を飛び出し、リトリース公国の草原と森林地帯へと通り越して、畑も街も通り越して、国境、緑地、街、国境と何度も見続けていくうちにジュナが春までに過ごしていたドーム国家ヘルネアデスもあった。白い砂浜へとやってきて、ついに蒼海へと飛び出した。

 海では鯨(フェジュウ)の群れや機動漁船が見えた。そしてアウローラ号はビーザール大陸の半島の一つに入り、山間部の森林地帯に着陸した。

 着地は後部エンジンを止め、底部のエンジンでゆっくり着陸。そのエンジン音で山の動物たちが驚いて逃げ出したが、誰も犠牲にはならなかった。

 ハッチが開いて、ジュナたち四人の融合適応者とラグドラグ達四体の融合獣が出てきた。移動時間はわずか二時間で、朝六時に出発したが今は昼の八時である。

「山間部に停めておかないと、駐船違反になるからな」

 エルニオがみんなに言った。

「それもそうよね。それにしても……、ここがアクセレス公国なのね。山の中だけど、エリヌセウスと変わらないわ」

 トリスティスが山間部の森を見て、見回す。アウローラ号の着地場所は森の木のない円状の荒れ地で、赤茶の土と萌黄の草が少しずつ生えている。

「あっ、あそこからだと街が見えます。行ってみましょう」

 羅夢が山林の高台を指差した。一行が行ってみると、なるほど。森と草地に白い丸や三角や四角などの遺跡らしい建造物があり、街の中には白い石造りの住宅らしき建物が何百、街の道路は黄色いレンガで敷かれた道で、水路も流れている。

 街の周りは畑や田や果樹園で今は種植えの時期で、農夫や農民がポンプ式の水撒き機や機動鋤で畑を耕している。今は少し空が灰色に曇っている。ただ寒くも暑くもない丁度いい気温である。

「この地区なんだよな。ジュナが育った場所っていうのは……」

 ラグドラグが街の光景を見て、呟く。

「うん。この……ハーカースって街だってママが」

 アクセレス公国のハーマサ地方ハーカース区がジュナがかつて住んでいた土地だと母親から聞いていた。

「とりあえず、行ってみましょ」

 ツァリーナの言葉で、一行は街に行くことにした。山道は普通に歩けば安全だが、走ると転がりそうな赤土と草の斜面である。時々、兎(ラビーニ)や栗鼠(リモール)や山鹿(デアッシ)を見かけるが、彼らは一同に攻撃することはなく、ただ見ている。

 山を下りた一行は目のあたりを見て、驚く。山からは見えなかったが、山のふもとは壊れた建物がいくつもあり、壁が崩れ屋根が穴開いていた。

「なんじゃこりゃあっ!?」

「滅茶苦茶だわぁ!!」

「ハヴェレスとの戦争の傷ですかっ!?」

「何てこった……」

 四体の融合獣はかつて街だった廃墟を見て驚く。何羽か鴉(ラヴェロ)がいて、クァクァと鳴いている。

「……アクセレス人は二度と悲劇を起こさぬようにと、この場所を初め、いくつかの戦争跡地を終戦の状態で残しているそうだ」

 エルニオがみんなに説明する。ジュナが辺りを見回すと、建物内や建物の近くに土饅頭と木の十字架で作った墓がいくつもあるのを発見した。十字架には死者名と生年月日と死亡日がッ刻まれている。ジュナは衝動的に足が動きだした。

「ちょ……ジュナちゃん!?」

 トリスティスが動き出したジュナに目を向けた。

「あいつ、兄貴の墓標を探そうとしているな」

 ラグドラグがそう言うと、戦争跡地をうろついているジュナを止めた。

「おい、ジュナ。言っとくけど、兄貴は生きている可能性があるって言ってたじゃないか。落ち着け!」

 ラグドラグの喝でジュナは我を戻す。

「ご、ごめん……。パパとママが作ったお墓を……」

「ジュナちゃん、ここですぅ」

 ジュビルムが声を張り上げる。駆け付けると、一本の古いレンオの木の下に墓があった。


レシル・メイヨー 一八五―一九二


「これがお兄ちゃんのお墓……」

「でも、土の中にお兄さんは埋めてないんでありやしょう?」

 ソーダーズが訊く。

「うん、形だけの……」

「あん?」

 エルニオがここ"墓場"にいるのが自分たち八人の他、もう一人いることに気づいた。

 自分たちがいる方向の反対に"墓地"に黒い服を着た老女が墓標に手を合わせて黙とうている。黒い頭巾に黒いケープ、大体六〇代半ばだろう。

「すみません、ちょっと失礼したします……」

 エルニオが老女に声をかける。話しかけられた老女は顔を上げ、この墓地にいる少年少女に目を向けた。老女は顔も手もしわだらけだが肌が白い。薄茶色の長い髪には白髪が混じり、薄紫の目が特徴的である。

「ちょっと聞きたいことがあって……」

「一体何だい?」

 老女が種族も衣服も違う四人の若者たちを見て訊き返す。

「おばさんは誰を亡くしたんですか?」

 トリスティスが老女に訊くと、老女は答える。

「三十年連れ添った夫を亡くしたのよ。あの戦争で……」

 老女も八年前の戦争の被害者で、しかも未亡人だった。

「うちの人は不器量で上級学卒でしがない農夫だったけれど、家族思いの良い人だったわ。あの戦争さえなければ、二人で隠居生活を……」

 老女は目頭を押さえて夫を亡くした思い出に浸っていた。

「あの、おばさん。ここにいるジュナちゃんも戦争の経験者でして……」

「あなたもなの? あなたは誰を……?」

「兄です」

 ジュナは二日で学んだ基礎のアクセレス語で老女に話した。

「お兄さんを……? それはまた難儀……」

「死んでいたと思っていたんですけれど、もしかして生き別れたんじゃないかと思って、ここに来て……」

「え? どういうこと?」

「わたしはあの時まだ五つで、兄との記憶がわからなくて……。つい最近思い出して、生きているんじゃないかと考えるようになって……。これが兄の写真です。こういう男の人見ませんでしたか?」

 ジュナは老女にレシル(九歳)の写真を見せた。老女は写真を見ていたが、首を振った。

「いいえ。知らないわ。折角遠いところからわざわざ来たというのに……ごめんなさいね」

 そう言うと老女は何かを思い出したように言った。

「ごめんなさいね。もう帰らなくちゃ。うちは娘夫婦が共働きで、二人の孫の面倒は私が見ているの。じゃあね、お兄さん見つかるといいわね」

「……はい」

 そう言うと老女は"墓地"から立ち去っていった。

「ここまで来たのに残念だったわね」

 トリスティスががっかり言う。

「他に手掛かりないんですか?」

 羅夢がジュナに訊く。

「そう言われても……」

 ジュナが気弱そうに言うと、ジュビルムが茂みに何かあるのに気付いた。

「おりょりょ? こんなところに見た事のない羽根があるですぅ」

「羽根? ツァリーナのじゃないのか?」

 ラグドラグが訊くと、ジュビルムは羽根を拾い上げてみんなに見せる。

「ツァリーナのじゃないです。ほらぁ」

 ジュビルムの右手には、抹茶色の羽根が握られている。しかも三ジルク(三〇センチ)の長さと意外と大きい。鳥でも鳥型融合獣の羽根ではない。もっと別の、飛行型融合獣のものらしい。

「ああ、ここに融合獣が立ち寄ったのかな? それにしても……軽くて弾力性があるね」

 ジュナは羽根を触ってみる。

 その時、曇天の空が晴れて、白金の太陽が現れた。そして導くようにレシルの墓を照らす。日光の当たったところの土まんじゅうの一ヶ所がきらりと光り、ジュナとラグドラグは何だろうと思って土まんじゅうをそっと掘り出す。

 中から出てきたのは、ジュナの掌大の瓶に入った手紙であった。

「おい、早く読んでみろよ!」

 ラグドラグにせかされて、ジュナは木栓を開き、金色の細紐で巻かれた手紙を出して広げた。手紙はアクセレス語で堅めの字である。

「読むよ……。

 ジュナ、父さん、母さん。今どこにいるのですか。僕は九歳の時、戦火の中でハヴェルス兵に捕まり、四年間奴隷としての生活を強いられました……」

 ジュナは「奴隷」の文字を見て、息がつまり声が震えた。

「奴隷……」

 トリスティスが呟き、他のメンバーも青ざめる。しかしジュナはレシルの手紙を読み続ける。

「……しかし、僕は四年目に脱出し、僕を奴隷にした連中に一矢報いるために隠れたように生活しているのです。帰りたくても帰れないのです。

 でもこれだけは覚えていてください。

 僕は家族を怨んではいません。妹のジュナが幸せでいるとしても、僕は憎みません。むしろ、ジュナには幸せな人生を歩んでほしいと願っています。

 ジュナ、もし僕のことを考えているのなら、お前の中に僕はいる。そう生きてほしい。


レシル・メイヨー」


 兄の手紙を読み終えて、ジュナは大粒の涙を零した。

「お兄ちゃん……」

 会えはできないけど、兄は生きていた。エルニオや羅夢やトリスティスやラグドラグ達四体の融合獣もレシルの手紙を知って、もらい泣きしている。

 ただ一つ言えるのは、レシルも融合適応者ということである。

 その羽根が物語っているように。