浅葱沼氷雨乃の文学の館


プロローグ



「あっ、やっぱりあったんだ」

 はねのある金髪に緑の眼の少年が平原の中にある白がかった銀色の巨大な円状の機械の中に入って、銀色の鎖に水色の石がはめ込まれたネックレスを見つけた。

 平原は乾いた地面の石ころ、空は灰色の雲に覆われていて、ゴロゴロと唸っていた。雷が起きる前触れである。

「シグルス! ここにいたのね。もうすぐ嵐が来るというのに、この子は……」

 平原の向こうにある集落のような場所から少年の姉とおぼしき少女が駆けつけてきた。少女は少年より背が高めで亜麻色の髪と水色の眼をしていた。

「あっ、お姉ちゃん。だってこのペンダントを落としたのはここだと思って……」

 少年が拾ったペンダントを姉に見せてあったことを教えた。

「もう。みんな心配しているのよ。さぁ、帰りましょう」

 姉は弟の手を取って、平原から去ろうとした。その時、空がカッと光って、ドォーンと雷の落ちる音がした。それから風と雨が起き、姉と弟に降りかかった。

「あああ……。帰ろうとした時に降るなんて……」

 姉が呟くと、雷鳴が再び起こり、稲光が姉弟の方に向かってきたのだ。稲光は姉弟が立っていた巨大な装置に当たり、すると装置が作動して、装置の枠から白い光が発せられ、ウィンウィン、という音と共に白い光はドーム状になって姉弟を包み込み、それは白い光の柱となって伸びて飛んでいき、光の柱が消えた後は姉弟の姿は跡形もなく消えていたのだ。